山ふところの沼のほとりにすむ木こりの和平と、気立てがよく、味のよいみそ汁をつくる嫁コのものがたり。
「コイニョウボウ」。
タイトルの響きとは相容れない表紙の絵。
どことなく上村一夫の絵に近い感覚があって、切なくて哀しいお話。
「さが」という言葉がなぜか心に浮かんできたのです。
押しかけ女房の正体は沼の鯉。
その鯉が和平にかけた一途な思いはどうしてだったのでしょう。
我が身を出汁にして、作った汁のおいしさ。
想う夫に身を削る妻の図式は、男の私にはたまらない罠です。
話は、村の鼻つまみ三人組によって別の展開となります。
沼に毒を流してさかなを捕って金儲けをしようというのです。
捕った魚を売ろうというのですから、人に害のある毒ではないのかもしれません。
それでも、汚染と環境破壊といった言葉も浮かんできたのです。
正体を知られて沼に戻った女房も、毒で死んでしまいます。
死に際に三人組を撃退し、殺してしまうほどの猛烈な最期でした。
帰ってくることのないコイニョウボウと、さかなの死に絶えた沼。
後に残るのは和平の悲しみだけ。
重苦しい話と恋心。
高学年の子どもたちはどのように受け取るのでしょうか。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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