バルサザール王は、心の優しい、賢い立派な王さまでした。ある晩、見たこともない大きな星が輝いているのを見つけ、その星は神さまの子が生まれたしるしだということを知ります。「らくだの用意じゃ、すぐ旅に出るぞ」と大声でけらいたちに言いつけると、王さまは贈り物にする金のさかずきを携えて、星をめざして旅立ちました。このさわぎに王さまの子ども、イレーヌス王子も「ぼくも連れて行って」と後を追います。贈り物として自分の3つの宝物、ボールと絵本と子犬のプルートンを持って……。
新約聖書マタイ福音書、東方の博士たちの話をもとに創作された絵本。贈り物の意味が、キリスト生誕ストーリーを背景に描かれます。物語の焦点はイレーヌス王子の旅。神さまの子に会うために1人で出かけた道中、いじめられている女の子、病気のおじいさん、足の悪い男の子……と、異なる境遇の人たちに出会います。それぞれの場面での王子の行為こそ、本作品の主題でしょう。 王子の道中、王さまたちの一行が同じページに描かれ、場面に奥行きの感じられる工夫がなされています。動物や今風のおもちゃが登場するイラストは親しみやすく、小さな読者が共感する場面が多く登場しますよ。丁寧な邦訳は、つつましい品格を生み出しています。 ――(ブラウンあすか)
この物語は、新約聖書マタイの福音書に記されている、キリスト誕生の物語に登場する東方の博士たちにヒントをえて作られたものです。今から2000年近く前、キリストがユダヤのベツレヘムで生まれたとき、東方の博士たちが星に導かれてやってきました。彼らは占星術に長じた人たちで、星をみてユダヤの王の誕生を知ったのです。博士たちは、黄金・乳香・没薬を贈り物として携えてきましたが、これらはどれも高価なものでしたから、彼らは3人の王だったともいわれています。また、博士たちの訪問は1月6日であったと伝えられ、公現日(異教徒に対する救世主の現れを祝う日)として祝う教会もあります。なお、この物語の原題は『いちばんすばらしい贈り物』(Das schonste Geschenk)です。イレーヌ王子の姿をとおして、あふれるばかりの真心こそが、いちばんすばらしい贈り物だということを、幼い読者にも理解させたいものです。
小学生のとき、叔母からクリスマスプレゼントにもらいました。それ以来、大事に何十回も読んで、結婚後も連れてきた宝物です。物語は、キリストの誕生を主題にして、自分が大切にしているものをほかの人に分かち与えられる心の寛容さをたたえています。物語もさることながら、挿絵もすばらしく、いつまでも心に残るものです。わたしの絵本は、わたしの物としてとっておきたいので、こどもがもう少し大きくなったら、また別にこどものために買ってあげたい本です。 (♪リスさん 30代・ママ 1歳)
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