くまのアモスが何かにつられて冬眠から目を覚ましました。「こりゃ、なんじゃろう…? なんも、見えん…、おかしな音も、においもせんが、なんかあるで…」。アモスはこの「何か」に引かれて、のそのそと起き上がり、ほらあなを抜け出しました。森から牧場を抜け、まっくらな村の道をどんどん進みました。
「何か」につられてほらあなを抜け出したアモスがたどりついた所は目の悪いおばあさんの家。一人暮らしのおばあさんはアモスをあたたかく迎え入れ、クリスマスイブのひとときを過ごしました。猫、カナリア、そしてネズミにまで話しかけながら日々を送るおばあさんにとって、アモスはこの上ない大切なお客だったのでしょう。特別な夜に感じたあたたかさは、おばあさんにとっても、アモスにとっても同じでした。アモスの感じた「何か」とは何なのか。社会生活を送る人間の原点が示される絵本です。3色使いの鉛筆画は優しげな作風を生み、作品の温もりを十分に伝えます。 ――(ブラウンあすか)
クリスマス絵本は秀作が多いけれど、これは中でも太鼓判。わたしのよい絵本の定義=何気ない、いつの間にか引き込まれている、あたたかい(心がこもっている・丁寧)……をすべて満たしています。
冬眠中に何かを感じて目を覚ましてしまったくまのアモス。においにつられて行き着いた家は、目の悪いおばあさんの家。おばあさんはアモスをくまとは思わず、あたたかく迎え入れます。それはクリスマスイブのできごとでした。
ネイラーは92年にニューベリー賞を受賞するなど、主にヤングアダルト向けの作品を書いてきた作家ですが、さすが、文章のうまい作家の作品は、何でもないことを描いても人を魅了する力を持ち合わせます。邦訳も巧みで、原書のよさがそのまま。方言を用いたアモスの話し方が、いい味を出しています。絵本としてはちょっと長めですが、息子はアモスとおばあさんの出会いを堪能したようで、ところどころ分からない表現を質問しながらも静かに作品に聞き入っていました。家の中でのできごとには赤の縁、外のできごとには青の縁を用いたこともすてきな編集のアイデアだと思いました。
お気に入りの絵本がまた増えました。イラストは3色使いの鉛筆画。地味ですが、じんわりと良さが染み入る最高級の絵本です。 (ムースさん 40代・ママ 男の子9歳、女の子4歳)
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