これは、40年以上前に作られた創作民話が4編収められた本です。
「おおかみのまゆ毛」は、木こりの娘が、山の神から授かった運命のもとに、数奇な人生を歩む話。物語中盤で、かざすと人間の本当の姿が見えるという狼のまゆ毛を手にします。
他には、
貧しい百姓の幼い娘が、父親が命がけで手に入れた「あずきまんま」に喜び、歌にしたばかりに起こる悲劇。
幼い頃の想い出を胸に、残酷な戦時中を生きる娘の話。
お日さまとお月さまが見つめる、子ども達の生き様。
どれも、人間、あるいは人間を取り巻くものの本当の美しさや醜さを問う、せつなさに満ちた内容のものばかりです。太田大八さんの美しい挿絵も、もの悲しさを引き立てます。
胸をしめつけられながらも、松谷さんの生み出す言葉の流れは、それを音にする自分が綺麗になっていく錯覚を起こすほど心地良いものでした。 (あさやんさん 50代・その他の方 )
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