仙台市生まれの戦場カメラマンは、言葉を失うほど破壊された故郷の姿と、 しかしそこで生き抜こうとする人々を、カメラと言葉に刻みました。
3月11日、14時46分。 震源地は三陸沖、マグニチュード9.0。
世界の戦場を 目の当たりにしてきた カメラマン、 高橋邦典が見たものは すさまじい破壊のあとと はてしなくひろがる 悲しみの大地だった
前触れもなく突然襲った地震と津波は、 人々になんの心の準備を与えることもなく、 家族や家を奪っていきました。 これまでの「ごく当たり前の生活」が 一瞬にして吹き飛んでしまったのです。 普通の人間であれば誰もが うちひしがれてしまうでしょう。
僕が東北で出会った多くの人たちも、 おそらくそうであったにちがいないと思います。 しかし、彼らはただうちひしがれているだけでは、 これから前に進めないことも知っていたのでしょう。
「自分より大変な人たちがいるのだから・・・・・・。」
そう自分自身に言い聞かせることによって、 彼らは自らを奮い立たせていたのではないでしょうか。 同時に、「他者に対する思い」を忘れないことによって、 自らの尊厳を保ち続けた、ともいえるかもしれません。 (「あとがき」より)
「あの日」はいつの間にか、「あの頃」に変わり、「あの時代」に変わっていくのだろうか。
悲しみは乗り越えていかなければいけないけれど、「あの日」のことはいつまでたっても「あの日」のままだ。
この本は児童向けに作られている。
そして、大人よりも子どもたちに語り継いでほしいと語られている。
写真に登場するのは、家族を失い残された「家族」だ。
背景の廃墟ともに、まだ虚脱感を持った「家族」たちだ。
写真に登場する人たちにとって「あの日」はいつまでたっても「あの日」のままだろう。
意図してかカラー写真は無表情に「あの日」を写し、モノクロ写真はカラーでは表現できない精神的な「あの日」を切り取っている。
戦地をめぐりながら、平和を子どもたちに伝えようとする高橋邦典さんならではの作品。
この本はドキュメンタリーではなく、残された人々の表情を真摯に受け止めようとした高橋さんのメッセージである。 (ヒラP21さん 50代・パパ )
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