おひさまが沈む夕暮れどき、一人の鬼の子が山を下りてきました。 ひとっこひとりいない村、その中の一番大きな家に近づくと何やら大きな声が。 「おには、そとーっ!おには、そとーっ!」 ぱらぱら飛んできた豆に「いてて!おいらのこと、どうしてわかったんだろう」。 そりゃそうですよ、だって今日は節分。こんな日にやってくるなんて、この鬼の子、なんてタイミング悪いんだろう。 慌てて逃げ込んだ縁の下、何やら真っ黒なやつがじっとうずくまってこちらを見ています。 「なにをしてるんだ?」鬼の子が勇気を出して聞いてみると・・・ 「おまえはおにだな。おれは、ふくだ」
災いと呼ばれて追い出される鬼。幸せを呼び込みたいと招かれる福。 でも・・・ちょっと待ってくださいね。 この鬼の子のように、好奇心旺盛で、気が優しくて、人懐っこい鬼だっているんじゃない? 全身真っ黒で、何やら人目ばかりを気にしていて、重そうな袋を背中にしょって家から出てくるのが・・・福? なんだか・・・変? 伝統行事といえば決められたことを決められた通りにやる場面が多いものだけど、でもたまには、こんな風変わりな鬼と福がいてもいいよね!
ちょっぴりスリリングな展開、ひと騒動の中で芽生える牛、ねずみとの友情。 こんなかわいい鬼の子なら、また来年も、いえすぐにでも会いたくなっちゃいます。 だから今度の節分では、こう叫んでみようかな。 「ふくはうちーっ!おにもうちーっ!」。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
節分の日の前やあとに読みたい! 「きつねのたなばたさま」で人気の正岡慧子先生のおはなしです
節分の夜に起こった小さな事件。謎ときに活躍する大きな牛。スリリングな展開の、ひと味ちがったお話絵本。
【担当編集者からオススメの一言】
「おにはそと、ふくはうち」という節分のおなじみの掛け声。 季節の変わり目の健康祈願や厄除けの行事ですが、 「ふくはうち」といったときに、 誰も入ってくる気配がない不思議……。 そんな発想からうまれたお話です。
山からやってきた鬼の子と、牛やねずみとの出会い。 にせものの「ふく」をやっつけて仲間たちの絆が深まります。 節分の前後に読みたいお話です。
ある日、退屈した鬼の子が、山を降りて村の大きな家に近づいた。家の中では節分の豆まきをしていて、豆をぶつけられた鬼の子は慌てて縁の下に潜り込んだ。するとそこには、「ふく」という男がいて…。 鬼の子の手柄のおかげで、この家で飼われている牛とネズミに、歓迎されるというお話です。
怖くない鬼の本が読みたい方におススメです。
(ぼんぬさん 40代・ママ 女の子3歳)
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