
父の失業で壊れそうな家族のために、13才の少女は地下街でヴァイオリンを弾く。家族とは、親子の絆とは何かを問いなおす作品。
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ヘルトリングの小説は、家族を様々な角度から家族を描いて、それぞれに感動溢れる内容になっていると思います。
この作品は、主人公のフレンツェ新しい家に引っ越すときにロバを飼いたいとねだった父親が、実は立ち上げた会社の吸収合併のあおりで解雇されていたというところから、一気に深みのあるドラマになっていきます。
家を出てしまった父親は、一緒に会社を立ち上げた仲間のうち、会社に残ったものからは避けられる存在になり、ごく普通の家庭が崩壊状態になります。
帰ってきてほしいと願うフレンツェは、父親と社会の中で数多く職を失った人々のためにと地下街でひとりバイオリンコンサートを開きます。
集まる人々、中止させる警官、そして居合わせた新聞記者によって新聞記事になってしまいます。
マスコミの怖さも感じるところですが、報道によって振り回される家族に予想外の亀裂が入ります。
この小説はハッピーエンドではありません。
父親は一番苦しい時に支えとなった、幼なじみの女性と一緒になる決意をします。
母親は娘のフレンツェと新しい住まいに旅立つことにします。
物語中フレンツェが助けを求めた父親方の祖父の行動も見過ごせません。
それぞれに、父親の解雇と新しい女性の登場、それまでの家族の活断層を直視し、関わり家族の旅立ちという一つの帰結を受け入れたのです。
巻末にヘルトリングの他の小説も絡めて、ヘリングの家族観をふまえての感想が述べられています。
ヘリングの小説は読み始めると虜になってしまう、要因がそこに記されていると思います。 (ヒラP21さん 50代・パパ )
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