2009年初版のフランス絵本。
原題の木は、アンネ・フランクが第二次世界大戦中の隠家の窓から見えたマロニエの木。
「アンネの日記」にも登場しています。
この木は、アンネ・フランクにとって自由の象徴であり、こうした記録は風化させないという意味合いから、木が語るというのは、有効な手法だったと思います。
2010年8月にこの木は、倒壊してしまうのですが、その苗木が広島県福山市のホロコースト記念館に寄贈されており、館長が訳者である石津ちひろさんであることは、物語を読み進める背景として知っておきたいものです。
外に出ることを許されない環境下にあって、彼女は、この木で四季を感じ、生への希望を見出していたのでしょう。
「雪に閉ざされる寒い冬のあとには、
命のはじける春がかならずやってくるのだと、
心の底から信じていたのです」
心の琴線に触れる一文です。
色調を押さえた絵は、この内容、文に似つかわしいもので、心情に通じるような雰囲気を醸し出していて、好感が持てました。
「アンネの日記」とともに、小学校高学年以上に読んで欲しい作品です。