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絵本紹介
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2023.07.28
今年も「青少年全国読者感想文コンクール」の課題図書、18作品が発表されました。
どの作品も、今の子どもたちへ新しい発見や気づき、発想を与えてくれる本ばかり。どの本を読もうか、まさに今考えているお子さんも多いと思います。
でも、ちょっと待って! 課題図書だけで夏の読書を終わらせてしまうのは、とてももったいない!
絵本ナビは「課題図書だけではもったいない! おすすめ児童書」と題して4作品をご紹介します。
連日の猛暑、酷暑のニュースで日中外に出るだけでも、対策をしっかりしないといけない2023年の夏。どこに出かけても暑いのなら、涼しい室内でどっぷり物語に浸かる、そんな夏の楽しみ方はいかがですか?
みどころ
「楽しくやるってことを、頑張らなくていいってことだと思ってるよね。」
「二十四時間、毎日毎日、合唱コンクールのことだけを考えていたら、うまくなれるの?」
「まわりと競争して一番をめざすことだけが、えらいってわけじゃないじゃん。」
どのセリフも心の真ん中にささるような、ドキッとするやりとり。
クラスメイトや仲間と何か一緒に取り組んだことがある小学生、中学生の皆さんは、似たような場を体験したことがあるでしょうか。
中心となる舞台は、学校の合唱クラブ。合唱コンクールに向けて「今年こそ金賞を」と力の入る張りつめた空気の中で、「頑張る」ことに対して、さまざまな立場や考え方の人が登場します。部長としての責任感から部員や下級生への指導に厳しさが増していく部長の穂乃花、合唱クラブの厳しさに耐えられなくなり不登校になってしまった優里、合唱部の雰囲気と優里のことでもやもやしながらもなかなか自分の意見が言えない、このお話の主人公、真子。合唱クラブには所属していないけれど美しいボーイ・ソプラノの歌声をもつ朔(はじめ)、そして朔が参加する商店街の「半地下合唱団」の個性的なメンバー。
朔に誘われて「半地下合唱団」の練習に参加するようになった真子は、発声練習も基礎練習もせず声量がバラバラながらも、「半地下合唱団」の全員が楽しそうに歌っている姿に打たれます。さらに、思っていることをしっかり言葉にできる朔やメンバーとのやりとりを通して、だんだん自分の言葉を見つけていきます。
元々は友だちだった部長の穂乃花がどんなに部員に厳しい言葉をかけても何も言い返せない真子の姿に共感する人も多いことでしょう。けれども、どうしたら良いのか、ずっと悩んで考え続けていたことで、真子の内側の思いはしっかりとした言葉となっていきます。穂乃花や顧問の先生に対して真子の言葉があふれ出る場面には、お話を読みながら同じようにもやもやしていた私たちの気持ちも外に出ていくようで、清々しさを覚えたり、励まされるのではないでしょうか。さらに、合唱クラブの在り方に対して全部を否定するのではなく、相手にとっての「正しさ」を認めながらどっちが間違っているとか悪者というわけではない、という考えには、人と人とのコミュニケーションにおける大切なことを教えてもらった気がしました。
「力強く、澄んだ風に物語や想いがとけると、ラベンダーみたいな優しい香りがする」
小学校の入学式の時に、はじめて聴いた合唱クラブの歌に、いい香りのするラベンダーのような風が吹いてきたのを感じた真子。それ以来ずっと憧れ、四年生で期待に胸を膨らませて入った合唱クラブ。さて、思いを伝えた先の合唱クラブの歌声は、またラベンダーの香りを吹かせることができるのでしょうか。
この書籍を作った人
1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年に『屋上のウィンドノーツ』で松本清張賞を、『ヒトリコ』で小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。『タスキメシ』(小学館)が第62回青少年読書感想文全国コンクール課題図書に。そのほか、『君はレフティ』『ウズタマ』(ともに小学館)、『完パケ!』『風に恋う』(ともに文藝春秋)、『沖晴くんの涙を殺して』『世界の美しさを思い知れ』(ともに双葉社)などがある。
この書籍を作った人
書籍装画、挿絵、マンガ、キャラクターデザイン、広告、パッケージイラストなど多数。児童書の装画として『大渋滞』(いとうみく・著 PHP研究所)、「悪ガキ7」シリーズ(宗田理・著 静山社ペガサス文庫)、『なかよくなれるかな』(今井福子・作 文研出版)、令和3年度版中学校道徳教科書『新・中学生の道徳 明日への扉』表紙絵(学研教育みらい)のほか、『ブルボン×住野よる オリジナルオーディオ小説『no doubt』濃厚チョコブラウニー』アニメーションテレビCMキャラクターデザインなどがある。
みどころ
どこまでも続く青い海と空にかこまれた「ナナカラやま」は、美しく豊かな世界。ナナカラやまには、動物や花や木や魚、虫や石や風‥‥‥など数えきれないほどのいろいろな生きものー「ナナカラたち」が暮らしています。
人間が昔から物語を語り継いできたように、ナナカラたちもたくさんの語り継ぐ物語を持っています。うれしいこと、かなしいこと、ずっと昔からあったことからつい昨日の出来事まで、おはなしやうたにして楽しみながら大切に伝えるのです。
1巻目の『くまおばあちゃんのジャム』では、くまおばあちゃんが孫のこぐまと過ごす日常の中に、自然にお話が溶け込んでいます。
ミツバチたちにハチミツを分けてもらうかわりに語る「はなひつじやま」の話。
夜寝る前に聞く「たぬきのむすめさん」の話。このお話はとくにこぐまのお気に入りです。
どちらのお話にもナナカラやまの自然の豊かさや恵みがたっぷりと感じられて、かつユーモラスで楽しさがいっぱい。そんなおばあちゃんが語ってくれる物語が作品の大きなみどころですが、さらに美味しいものが出てくるところもとっても魅力的! おばあちゃんが作るやわらかくて白いおだんごに、のいちごとはちみつで作ったできたてのジャムをかけて食べる様子がたまりません。また、自然から何かをいただく時には、必ずかわりに何かを差し出すおばあちゃんの姿勢は、自然を大切にする気持ちをさりげなく教えてくれているようです。
こちらの「ナナカラやまものがたり」シリーズは、2014年に童心社さんより刊行された『ナナカラやまものがたり』に新たな物語が加わり、全3巻となってあらたに誕生したシリーズです。判型がちょっと小さめで子どもの手のひらにすっぽり入りそうな大きさと、ほんのりとした和の色彩の表紙は、子どもだけでなく大人の心も掴んでしまいそうな可愛らしさ。本のすみずみまで丁寧に描かれる自然の美しさと楽しさからは、作者のどいかやさんの自然を敬い、愛する視点がたっぷり伝わってきます。
子どもから大人まで楽しみたい「ナナカラやま」の美しい世界。この先長く読み継がれるシリーズとなっていくことでしょう。子どもたちには、とくに絵本から読み物への移行期におすすめです。
この書籍を作った人
1969年、東京都生まれ。東京造形大学デザイン科卒業。絵本の作品に『パンちゃんのおさんぽ』『いたずらコヨーテキュウ』『やまねのネンネ』(BL出版)、『みけねこキャラコ』『こねこのポカリナ』『おはなのすきなトラリーヌ』『トラリーヌとあおむしさん』『ふゆのひのトラリーヌ』(偕成社)、『チップとチョコのおでかけ』『チップとチョコのおつかい』『チップとチョコのおるすばん』(文溪堂)、『くりちゃんとひまわりのたね』『くりちゃんとピーとナーとツー』(ポプラ社)、『チリとチリリ』『チリとチリリ うみのおはなし』『チリとチリリ まちのおはなし』(アリス館)、『ねずみちゃんとりすちゃん おしゃべりの巻』(学習研究社)、『カロンとコロン はるなつあきふゆ4つのおはなし』(主婦と生活社)、『ねこのかあさんのあさごはん』(小学館)など多数。千葉県在住。
みどころ
仏さまがアグラをかいた形のアグラ山。
そのふもとの、小さな池のほとりにすむのは…カエルのキダマッチ先生です。
キダマッチ先生は、どんな病気やけがでもあっという間になおしてくれるという、評判の名医です。
きょうはどんな患者がやってくるでしょうか。
足をひきずるアリンコじいさん、息がくるしいトカゲのおくさん、そして牧場で倒れた子ウシ…!?
小さな患者から大きな患者まで、キダマッチ先生は引き受けます。
カエルの姿に、名医らしい風格がにじむキダマッチ先生。
白衣は着ないけれど(なぜかというと背中のせっかくの水玉もようがかくれてしまうから)、患者のいうことを鵜呑みにしないし、良心的な値段で診てくれるし、サブタイトルにあるとおり“かんじゃにのまれる”ほど我が身が危なくてもちゃんと治療をしてくれるし…。
本当にいいお医者さんです!
そんなキダマッチ先生にも気になることがひとつ。それは、出て行ってしまった派手好きの奥さんのことですが…?
児童文学作家、今井恭子さんの初めての絵本シリーズ、第1作目。
岡本順さんの挿絵は繊細で生き生きしたタッチがすばらしく、生き物たちの姿や、診察室の中など、いつまでもながめていたくなります。
個人的には、先生が黒い医者かばんを頭にのせてすいすいと泳ぐ絵に、すっかり心を奪われてしまいました。なんてのびやかに、気持ちよさそうに描かれているのでしょう!
さて、気になる奥さんのその後は本書ではわかりません。シリーズははじまったばかりですから、きっと徐々にいろんな出来事が描かれていくのでしょうね。
はじめての1人読みにもぴったりのシリーズです。小さな名医、キダマッチ先生にご注目くださいね。
この書籍を作った人
広島県生まれ。日本文藝家協会会員。日本児童文学者協会会員。児童文学作家。作品に『歩きだす夏』『ぼくのプールサイド』(学研)、『アンドロメダの犬』(毎日新聞社)、『前奏曲は荒れもよう』『切り株ものがたり』(福音館書店)、『丸天井の下のワーオ!』『こんぴら狗』『縄文の狼』(くもん出版)、『鬼ばばの島』(小学館)、「キダマッチ先生!」シリーズ(BL出版)など。『こんぴら狗』では第58回日本児童文学者協会賞、第65回産経児童出版文化賞産経新聞社賞、第67回小学館児童出版文化賞を受賞。
この書籍を作った人
1962年愛知県生まれ。挿絵を中心に広く活躍中。主な作品に絵本『きつね、きつね、きつねがとおる』(日本絵本賞受賞、ポプラ社)「キダマッチ先生!」シリーズ(BL出版)、挿絵に『となりの蔵のつくも神』(ポプラ社文庫)、『はなざかりの家の魔女』(あかね書房)、『宇宙からきたかんづめ』(ゴブリン書房)、『キジ猫キジとののかの約束』(小峰書店)など。「物語の挿絵の仕事が好きだ。物語に登場する“人物”たちの動きや表情を描くのは楽しい。」
出版社からの内容紹介
複雑な仕組みをアイデアたっぷりのイラストでシンプルに解説することで有名な世界的ベストセラー作家・イラストレーター、デビッド・マコーレイによる算数図鑑です。
日常生活でも一生つきまとう算数の基礎知識を、お金の計算や時間の計り方、地図の見方、建物の建て方、乗り物の動き方、表の作り方など60以上のトピックに分け、それぞれマンモスとトガリネズミによる一コマストーリーで解説していきます。
足し算、掛け算、約数、分数、比率、面積、体積、角度、数列、速さ、質量、確率…、言葉や数式だけではなかなか納得できなかった算数の基本概念が、子どもも大人も目からウロコが落ちるようにわかります。
この書籍を作った人
イラストレーター、作家。1946年イギリス・ランカシャー生まれ。1957年にアメリカ・ニュージャージー州に移住し、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで学んだ後、同校の教師を務める。1975年にドイツ児童文学賞、1991年にコルデコット賞受賞。『道具と機械の本―てこからコンピューターまで』(歌崎秀史訳、岩波書店)など全世界で発行されている著書多数。
この書籍を作った人
1972年東京生まれ。1991年武蔵高等学校卒業。1995年京都大学理学部卒業(数学専攻)。1997年京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻数学系修士課程修了(数理物理学、表現論)。1997年開成中学校・高等学校に数学科教諭として着任、現在に至る。著書に日本語版監修者として『算数・数学で何ができるの?』(DK社編・東京書籍)のほか、数学書、学習参考書の執筆多数。