谷口智則さん最新刊 全然違う「きみ」と「ぼく」の物語
堀内誠一さんの原画に、詩人・谷川俊太郎さんが文をつけた新作絵本『ちちんぷいぷい』の発売を記念して、制作に携わった方へのインタビュー連載がスタートしました。
序章では、堀内誠一さんがどんな方なのか、作品と一緒に紹介します。
2021年10月18日に発売となる絵本『ちちんぷいぷい』(くもん出版)は、50年ぶりに発見された堀内誠一さんの原画に、詩人・谷川俊太郎さんが文をつけた新作絵本です。
みどころ
あれれ、おかしなかっこをしたきつねさんがいるよ。知らないな、こんなおじさん。すると「ちちん ぷいぷい……ぱっ」どんぐりがいっぱい出てきた!? 新たに発見された堀内誠一さんの原画に、詩人の谷川俊太郎さんが文章を書き下ろし、素敵な絵本が出来上がりました。
堀内誠一さんといえば、雑誌「anan」、「POPEYE」「BRUTUS」「Olive」のロゴデザインなど、数々の黄金期の雑誌を手がけたアートディレクターであり、『ぐるんぱのようちえん』『たろうのおでかけ』(共に福音館書店)など、発売から50年以上経った今も読み継がれる名作絵本を生み出した絵本作家でもあります。
来年2022年はそんな堀内誠一さんの生誕90周年にあたります。絵本『ちちんぷいぷい』の発売を記念した連載の第1回では、改めて堀内誠一さんについて絵本を中心にご紹介したいと思います。
堀内誠一(ほりうちせいいち)
1932年東京生まれ。グラフィックデザイナー、絵本作家。主な絵本作品に『くろうまブランキー』『くるまはいくつ』『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』『ちのはなし』(以上福音館書店)、『おひさまがいっぱい』(童心社)、『かにこちゃん』「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)、『マザーグースのうた』(草思社)など多数。また著書に『父の時代 私の時代』(マガジンハウス)、編著書に『絵本の世界・110人のイラストレーター』(福音館書店)など。1987年没。
1958年刊行の『くろうまブランキ―』(福音館書店)は、切なくも優しいクリスマス絵本です。 静かで優しく美しい絵、特に表紙絵は飾っておきたくなるほど。当時はデザイナーの描く絵本として紹介されていたようです。『くろうまブランキ―』より前に、最初に取り組んでいたグリム童話の『七わのからす』(福音館書店)も、翌年に刊行されました。こちらの2作品が、堀内誠一さんの絵本デビュー作といえます。
福音館書店の月刊絵本「こどものとも」では、20作品を手がけました。愛され続けるロングセラー作品が、ここから誕生しています。
出版社からの内容紹介
ぐるんぱは、ひとりぼっちの大きなぞうです。ビスケットやさん、靴屋さん、ピアノ工場、自動車工場……。ぐるんぱは、色々な仕事場で一生懸命に働きますが、つくるものが大きすぎて失敗ばかり。そんなときぐるんぱは、子どもがたくさんいるお母さんに出会います。子どもたちの世話をたのまれたぐるんぱは、とても素敵なものを作ります。それはぐるんぱが作った大きなものでたくさんの子どもたちが遊べる、すてきな幼稚園でした。
出版社からの内容紹介
たろうは、なかよしのまみちゃんの誕生日に、すみれの花とアイスクリームをもって、動物たちといっしょに出かけました。みんなはうれしくって、とっとこかけだしますが、町の中ではおじさんたちに「けがをするから、だめ! 」といわれて、なかなか先を急げません。でも、原っぱにきたら、もう思いっきり……。交通ルールを教えながらも、元気いっぱいの絵本です。
出版社からの内容紹介
初めて空を飛んだ日、こすずめは遠くまで飛びすぎてしまいました……。物語の展開につれて高まる緊迫感と結末の見事さが、子どもたちの心をとらえます。
堀内誠一さんの絵本を並べてみると、作品によって実に様々な画風で制作されていることに驚かされます。美しいグラフィックデザインが印象的なこんな絵本では、堀内誠一さんのアートディレクターとしての顔が存分に味わえます。
美しい色彩で描かれたアンデルセンやグリムなどの古典の童話。広く知られたおはなしを、堀内さんの絵で深く味わえます。『おやゆびちーちゃん』『あかずきん』(ともに福音館書店)は、原画の美しい色を再現した新装版で2020年に復刻しています。
堀内誠一さんの手がけた紙芝居。紙芝居ならではのドラマチックな展開が、生き生きとした線で描かれています。子どもたちがゾクゾクしながらこの作品を楽しんでくれる姿が目にうかびますね。
1969年に福音館書店から創刊された月刊科学絵本「かがくのとも」。堀内誠一さんが手がけた作品は、日本はもちろん世界でも翻訳され、ベストセラーとなっています。
幼年童話の名作にも、堀内誠一さんの絵とデザインのすばらしさを見ることができます。お話と合わせて大きな魅力となっているのが、堀内誠一さんの挿絵。堀内さんの描く愛嬌たっぷりでユーモラスなキャラクターは、子どもたちの心を掴んで離しません。
『ふらいぱんじいさん』『ロボット・カミイ』どちらも、出版から50年以上経っていますが、カラフルであざやかな色づかいは今でも全く古さを感じませんよね。
新刊『ちちんぷいぷい』と同じく、詩人・谷川俊太郎さんと堀内誠一さんがタッグを組んだ仕事には、「わらべうた」シリーズ(冨山房)や、「ことばとかずの絵本」シリーズ(くもん出版)など、たくさんの作品があります。1975年から刊行された『マザーグースのうた』(全5集)(草思社)は、100万部を超えるベストセラーとなりました。
1974年に渡仏し、家族とパリに在住した堀内さん。各国を旅した旅行家としても知られています。映画や音楽にも造詣が深く、執筆された文章からは、絵本、デザインだけでない、さらに様々な堀内誠一さんの一面を知ることができます。そんな書籍の一部をご紹介します。
いかがでしたでしょうか。次回からは、堀内誠一さんの作品と関わられた方へのインタビューを公開予定。さらに深く、その作品や人柄の魅力に迫ります。お楽しみに!
文・構成:掛川晶子(絵本ナビ編集部)