ねずみのピナは、自分の目の前から突然姿を消した大切なひとを探している。そのひとは“お星さま”になって遠くから彼女を見守っているという。かけがえのないひとの喪失を静かに受け止めて、乗り越えていく主人公の心の動きを描いたこの作品は、著者の実体験から生まれた悲しく切ない物語。
繊細で優しさが溢れるイラストと、そのイラストにぴったりな心のこもった一文、一文。まるで詩のようです。
最愛の人を失った悲しみというのはそれを経験した人にしか到底わかるものではないでしょう。
誰にもわからないほど大きな悲しみ、苦しみ、さみしさを紛らわせるためにきっと、このピナのように探し求めているのでしょう。そんな心の闇から明るい一筋の光を探しあてていくさまがまるで心そのものを映し出しているかのような不思議な感覚になれる一冊です。
この絵本を読んでいる時、真っ先に浮かんだのがつい先日、闘病の末亡くなられた小林麻央さんのことでした。
そしてピナがご家族、特に娘さんや息子さん・・
深い悲しみの中でも、前を歩いていこうと気丈にふるまう旦那様。
そして、闇の中でも笑顔を見せてくれる可愛いお二人の宝物。
きっと、世の中にはたくさんの方がこのピナのような気持ちを味わっているのでしょう。
ピナは、きっと失った悲しみが時間と共に段々とわかってきてさみしさが溢れたのでしょう。
いないんだ・・・
ふと、その現実を受け入れた時に湧いてきた感情が描かれていて模索していく様子がイラストと共に心に入ってきます。
どんなふうにすればまた会えるんだろう。
高い高い木の上を目指して進むピナの気持ちを考えると涙が自然と溢れてきました。
きっと、進まずにはいられなかったのですね。
そして、そこで流したピナの大粒の涙。
ずっと力を入れて歩いてきたけれど、「泣いてもいいんだよ」という言葉はピナの心を浄化させてくれたに違いありません。涙を流すシーンは思わず安堵しました。
あふれるおもいでで、そのひとをてらしつづけて・・
という一文が心にしみわたりました。
泣いてもいいんだよ・・
大切な人を失ったという経験を持つ人は大勢いるでしょう。
自分の素直な感情に向き合って涙を流し・・
そしてこの絵本を開けたら・・きっと不思議な感覚に包まれることだと思います。
言葉はいりません。
この絵本がピナと同じ胸中にいる人の目に一人でも多く触れますように・・・
そう願っています。 (Pocketさん 40代・ママ 女の子14歳、男の子10歳)
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