主人公の少年は、ある事情でこの町に引っ越してきたばかり。 町は石炭の匂いと羊のスープの匂いがして、金属のやぐらが音を立てています。
見るものも匂いも、何もかもが自分の住んでいたイタリアのローマとは違う。 少年は、この町で「よそ者」だと思い知らされる毎日を過ごしていました。
そんな中、唯一心を開ける存在が、町に住む老人エバンズさんと、エバンズさんの飼っていたハトたちでした。
少年は、レース用に訓練された一羽のハトに名前をつけて、エバンズさんからそのハトをもらいます。
「レ・デル・チエーロ!イタリア語で空の王さまっていう意味だよ!」
エバンズさんに習ってレース用にハトを訓練する少年。 そして、ついに少年のハトは、レースに出ることに・・・。
出だしから、絵本とは思えないほど、暗く閉塞感に満ちた風景が広がります。 羊のスープに石炭の匂い。きっと町に漂うそのどちらも、少年にとって強烈な匂いに違いありません。 少年のふるさとへの思いと、でも帰れない何らかの事情があることも、痛いほど伝わってきます。
様々な事情から、見知らぬ土地で暮らさなくてはいけなくなった子どもたちは世界中に沢山いるはず。 現実に立ち向かい、明日をひたむきに切り開こうとする、その全て子どもたちに捧げる最高のエールとなる絵本です。
(福田亜紀子 元絵本編集者)
ぼくのふるさとは、お日さまが明るくて、おばあちゃんの店のバニラアイスのにおいがする場所。こしてきたこの町は、けむりがたちのぼり、石炭の粉のにおがしている。ぼくはよそもの。でもエバンズさんでであって、なにかがかわりはじめた。いっしょにハトをとばし、夢をおいかけはじめてから――遠い国に越してきて自分の居場所がないと思っている少年と、長い炭鉱の仕事を退職し大空を渡るハトに夢を託す老人の、二人の孤独と夢と友情を、さくまゆみこの訳で。
タイトルの色使いがちょっと変わっていておしゃれだなと思い、気になりました。
異国の町にやってきた男の子のお話。
自分がよそ者だと思い知らされるのですが、レース用のハトを飼う老人エバンズさんと出会い、少しずつ変わっていきます。
柔らかなタッチで描かれたイラストが、男の子の気持ちをうまく表しているように思いました。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子17歳、女の子15歳、男の子12歳)
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