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ちえちゃんは、ひっこみじあんな女の子。友達とかんけりをすることになるが、どんどんつかまっていき、最後は自分ひとりになる。背中をおしてくれる人はいても、最後に自分で決心することの大切さ。微妙な心の動きを絵で表現する。
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「かんけり」という遊びを知っていますか。
空き缶を使ってする遊びですから、子供たちには危ないという人もいるかもしれませんし、漫画「ドラえもん」に出て来るような空き地ほどのスペースも必要ですから、なかなか現代の子供たちにはなじまないかもしれません。
では、「かんけり」がどんな遊び(だった)か、この絵本の文から説明しましょう。
絵本では全文ひらがな表記ですが、ここでは漢字まじりで書いておきます。
「鬼が30数える間に、みんないそいで隠れます。鬼は隠れた人をみつけると、名前を呼びながら缶を踏みます。まだつかまっていない人は、鬼より前に缶を蹴り、みんなを助けます」
かくれんぼ遊びの変形のような遊びです。
昭和30年代の頃はよく「かんけり」をしたものです。
おもちゃなんかあまり買ってもらえなかったですから、空き缶を使ったり新聞紙を使ったりして遊んだものです。
そのことでいじけることはなかった。だって、みんなそんな暮らしぶりでしたから。
この絵本の作者石川えりこさんは1955年生まれですから、そんな時代に大きくなった世代です。
でも、この絵本はただ懐かしい遊びを描いたものではありません。
主人公のちえちゃんは少し引っ込み思案の大人しい女の子。
かんけりでも缶を蹴るのが怖くて、まだ誰も助けたことがありません。
この日は違います。ちえちゃんは最後まで鬼に見つかっていません。つかまったみんなを助けられるのは、ちえちゃんだけ。
最後に駆け出すちえちゃんのかっこいい顔を見ていると、すっきりすることでしょう。
まるで、明日への架け橋のような「かんけり」です。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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