月曜日、大好きなつばさ園にやっと戻ってこれた。 病院でいっぱい練習したから大丈夫。 歩行器があれば、みんなと歩ける。歩くの、大好きだもん。 わたしは、こくん、とうなずいた。
「てつだってやる」 しゅんくんが、さっと手をのばしてきたけど、 「いらない」 私は言う。
金曜日、今日はホールで歌の会。 ステージへの階段3段だって、自分であがる。 わたしは息をすって、こくん、した。 みんなが心配そうに私を見てるけど、しゅんくんがすぐに言う。
「こいつは じぶんで やるんだ。 あたまを こくんって したら、かならず じぶんで やるんだぞ!」
そんなしゅんくんが、ある日竹馬を使ってびわの木に向かっている。 高いところになっている実をとろうとしている。 すごい、しゅんくん。私も憧れていたあの場所へ……のぼりたい!
ガッツンゴツン。 自分ではない、誰かが踏み出す新しい第一歩。 決してスムーズではない、にぶい音を出しながら、まわりをハラハラさせながら、 挑戦する新しい扉。 それが、こんなにも自分の心を感動させるなんて……。
「自分とはちがうだれかに出会うことは、自分と出会いなおすことでもあります」とは、作者の村中李衣さんの言葉。確かに、これは「わたし」の話でありながら、「しゅんくん」の話でもあり。大胆迫力な表現と、繊細な表情の変化を、生き生きとした鉛筆の線で表現してしまう石川えりこさんの絵の魅力も相まって、ぐいぐいとお話の力に惹きこまれていきます。
しゅんくんの「なんだって、できるんだ」という言葉。 そんな風に言えるのは、一緒にその景色を見たからこそ。
知らず知らずのうちに、読者の心の中にも新しい風が吹き始めているようです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
わたしは退院して、大好きなつばさ園にきた。ある日、しゅんくんの挑戦を見て、わたしもすべり台にのぼりたいと思った。歩行器から手をはなし、ガッツンゴツンとひざをぶつけながら階段をあがっていった先には…。
ちさとちゃんの気持ちが、孫の気持ちを代弁しているようでした。
孫も今は、車いすをつかうけれど、歩行器だったなあと懐かしかっ
たです。しゅんくんが、ちさとちゃんを優しく見守っている姿が印象
に残りました。滑り台のてっぺんで、みさとちゃんの体を支えて
くれてる両手や、滑り台を滑るちさとちゃんが、満願の笑顔に
対して、しゅんくんの真剣な眼差しがとても心強く思いました。
力強い味方のしゅんくんのいるんだと、泣けて涙はとまりません
でした。 (押し寿司さん 60代・じいじ・ばあば )
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