火曜日の朝。ジムが起きると、ベッドの足の方でしっぽがゆれているのが目に入りました。 「なんでぼくにしっぽがあるの?」
ベッドから堂々と姿をあらわしたのは、ジムという名の人間の男の子……でなくてライオン。 階下からママが「あさごはんのパンケーキがやけたわよー」と呼ぶ声が、「おいしそうな声」に聞こえます! ライオンのお腹はぐーぐーなっています。 そしてママに向かって答えるには……「きょうはパンケーキってかんじじゃないんだ」「なまのにくってかんじかな……」
生の肉!? そうか、だってライオンだもの!
おやおや、ジムはどうしちゃったんでしょう。 ママのことを食べたくてたまらないなんて。 大丈夫!?
ライオンになったジム。町を歩きながら次々と人を飲み込みます。 やめたいと思うのに、自分ではどうにもできません。 このおはなし、どんな結末に向かうのか……。 ぜひドキドキしながらご覧あれ!
今は亡き絵本作家モーリス・センダックに捧げられた、奇想天外なストーリー。 朝起きたらライオンになっていた男の子のとんでもない一日が描かれます。 セピア調の色彩で描かれた家や町、森の景色は、どこか懐かしく、いつのまにか取り残された夢の中みたい。 表情豊かな大きいライオンの、とくに眉毛のあたりにジムらしさが潜んでいるようで、このジム・ライオンったら何を考えているの?とじっと見つめてしまいます。
アメリカ・メリーランド州ボルチモア生まれの作家、ローレル・スナイダーの文と、北オランダで少年時代を過ごしたチャック・グルーンインクの絵によって生まれた作品。 大胆なストーリー展開、落ち着いた色合いや線のタッチ、思いきった構図が魅力的な大判絵本です。 子どもの変身願望を満たし、日常のモヤモヤをさりげなく吹き飛ばしてくれそうな不思議な作品です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
ジムがめをさますと、ライオンになっていました。したの台所からパンケーキがやけたというママの声がしました。でもジムは、パンケーキじゃない気分。きょうは、なぜかなまのにくがたべたい! おなかは、ぐーぐーなって、まちにとびだしたジムは・・・。ユニークな発想で想像力豊かに描きます。
モーリス・センダックに捧げたというこの絵本、あえて意識したのか、人間の不条理な真相意識をとりあげたように思います。
ある日ライオンに変身したジムは、母親を呑み込んでしまいました。
そうしたらお腹がどん欲に欲求を始めたので、ライオンになったジムは、次々に人間を呑み込んでいくのです。
恐ろしい展開にドキドキしていたら、クマが襲ってきて両者はぶつかり合います。
その途端にジムは正気に戻るのです。
飲み込んだ人間がもとに戻されて、ジムは人間に戻り、普通の朝食を食べることができました。
センダックの「かいじゅうたちのいるところ」をオマージュしたような作品ではあります。
でも、ライオンとクマのぶつかり合いに、何か象徴性を感じてしまいました。
ライオンから連想する国、クマから連想できる国が頭に浮かんできてしまったのです。
どのように読みとるかは読者まかせでしょうか。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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