ぼくのママは、海賊なんだ。強い仲間とチームをつくり、「カニなんてへっちゃら号」という名の船に乗り込み、大きな嵐をかいくぐり、胸に傷をつくりながら、それでも大きい波に立ち向かう。
船から帰ったママの顔は真っ青になり、何も食べられない夜もある。頭に巻いたきれいなバンダナが似合っている。ぼくは自分の部屋で、敵と勇敢に戦い続けるママの姿を思い浮かべる。港を離れて海に出る時、ママは怖くないのかな……。
2018年にフランスで刊行されたこの絵本は、発売当初から大きな話題となります。傷跡、吐き気、体力の消耗、頭に巻いたバンダナ……それらのキーワードから段々と見えてくるのは「がんとの闘い」という事実。ところが不思議なことに、これが船の上で仲間たちと助け合う「海賊」のイメージにぴったりくるのです。そして、この困難な病気との闘いが、勇敢に挑むべき「冒険物語」のように思えてくるのです。
誕生のきっかけは、作者自身の経験によるもの。4歳半の我が子に病気の事をどう伝えるか悩んだ結果、このユニークな発想が生まれたのです。重く苦しくなりがちなテーマを、明るく、そして現実に沿って描きだしています。コミカルで愛らしいイラストも気分を盛り上げてくれます。
誰にでも起こり得る病気だからこそ、希望の存在となってくれるであろう事はもちろん、困難を物語になぞらえて捉えていくという発想そのものが、小さな子どもたちの背中を押していってくれるのもしれません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ぼくのママは かいぞくなんだ。 ふねのなまえは〈カニなんてへっちゃら〉ごう。 もう なんかげつもまえから ママは たからのしまを めざして、かいぞくなかまと そのふねで たびをしている。 たびから かえってくると、ママは いつも とてもつかれているみたい。
「ママはかいぞく」なんて、タイトルがスゴいです。
ママは勇敢で、一人で航海に出ていき、帰ってきます。
ママの胸の傷、海賊船の不思議な船員たちに、うっすらと心に湧いてくる疑念が、ママのバンダナで確信に変わりました。
ママは一人で戦っていたんですね。
解説を読んで納得、カニ(crabe)の意味する別のことを理解したとき、たまらなくなりました。
ママが英雄であることを、いずれ坊やは誇りに思うのでしょうね。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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