ひゅーひゅるー、外はすごい風。
「かぜさん、だれか いっしょに あそぼうよって ないてるみたい」
気になって仕方がないけれど、もう寝る時間。りくくん、ベッドに入らなきゃね。風はどんどん強くなる。ひゅーひゅるるー、びゅううううっ。
「あっ」
庭にあったりくくんのくるまがとんだ! それを見て、おもちゃたちも一斉にかけだした!まって、まって。大変、みんな外に飛び出し、あっという間に月の下。いったいどこまで飛んでくの? 目指すは遠くのあの森だ。ひゅーひゅー ひゅるるるー……。
こんなに強い風の日は、寝るのが怖くなっちゃうかな。いえいえ、りくくんは思いっきり風と一緒に遊んできたみたい。躍動感たっぷり、幻想的な夜の空、真っ暗な森、どんな場所だって、彼にとっては素敵な遊び場所。阿部結さんの描く子どもは、どうしてこんなにも魅力的なのでしょう。背伸びして窓の外をのぞく後ろ姿、風の思うままにされる小さな体、顔だけ出して隠れる姿。だけどやっぱり一番愛おしいのは、お母さんの顔を見つけたとき!
夜がちょっぴり長く感じそうな日は。この絵本をそっと開いてみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
風が強く吹く夜、おもちゃが外に飛び出した。風と遊ぶ男の子の一夜の、夢と現実が入り混じるお話を圧倒的なイラストで描く。
阿部結 1986年宮城県気仙沼市生まれ。中学校で美術教師を務めていた画家の父の影響を受け、幼少のころから絵に親しんで育つ。パレットクラブスクール、あとさき塾にてイラストレーションと絵本制作を学び、書籍装画や演劇の宣伝美術などを数多く手掛ける。イラストレーションの仕事に『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』『サラリーマンのごちそう帖』(ともに朝日新聞出版)、絵本の作品に『あいたいな』(ひだまり舎)、『ねたふりゆうちゃん』(白泉社)、『おやつどろぼう』(こどものとも2021年8月号 福音館書店)がある。東京都在住。
外で強風が吹き荒れている夜の緊張感は半端ありません。
そのドキドキ感を、冒険心や遊び心に置きかえていく少年のイマジネーションは素晴らしいと思います。
強風に吹かれて、窓の外へ飛び出してしまった少年やおもちゃたちは、飛ばされた先で風とお友だちになりました。
でも、風の気まぐれと、風の強さで、その空間さえもどんどん追いやられていくところが、楽しく感じられました。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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