ある日突然、竜巻に吹き上げられ、家ごと不思議な国に運ばれてしまったドロシーと愛犬のトト。おじいさんとおばあさんがいるカンザスに帰りたい!その願いを叶えるため、国を支配する偉大な魔法使いオズに会いにいくことになります。旅の途中、脳みそがないことを嘆くカカシ、心臓がないことを悲しむブリキのきこり、勇気がないことに悩む臆病なライオンと出会い、一緒にエメラルドの都を目指します。
「オズの魔法使い」は、1900年にアメリカで出版された、ライマン・フランク・ボームのファンタジー古典。物語はミュージカルや映画にもなり、世界中の子どもにも大人にも愛されるようになりました。日本でも多くの人々に親しまれる不朽の名作です。こちらは、そのダイジェスト版ともいうべき作品。物語の見どころをぎゅっと集め、小さい子にもわかりやすく描いた絵本の愛蔵版です。
詩人でもある岸田衿子さんの読みやすくテンポの良い文章に、堀内誠一さんのカラフルで生き生きとした挿絵が添えられます。堀内誠一さんは数々の黄金期の雑誌を手がけたアートディレクターであり、『ぐるんぱのようちえん』『たろうのおでかけ』(共に福音館書店)など、名作絵本を数多く生み出した絵本作家さん。デザイン性が高く、愛嬌たっぷりのユーモラスな挿絵は、子どもだけでなく、大人の心も引きつける魅力があります。
一行は、怪物に襲われたり、ケシの花の香りを吸って眠くなったりと、様々なピンチに遭遇します。そのたびにドロシーは仲間たちと一緒に、魔法の道具の力を借りながら、乗り越えていくのです。この物語は、山あり谷ありの奇想天外の冒険ストーリーである一方、実はそれぞれ大切なものを失ったり、大切なものが欠けていると悩み、傷ついている者たちの成長物語でもあります。脳みそがないはずのカカシは、名案を次々と思いついて仲間の危機を救います。心のないはずのブリキのきこりは涙もろく、勇気がないはずのライオンも、みんなのために敵と勇敢に戦うのです。ドロシーも、自分の望みを叶えるために奮闘します。
知恵と思いやりと勇気を感じる、壮大な冒険物語。個性あふれるキャラクターたちのファンになったら、今度は完訳版を読んで、さらに作品の深い部分を味わうというのもいいですね。まずはこの絵本で、世紀が変わっても古びることのない名作と出会ってください。
(出合聡美 絵本ナビライター)
たつまきにあったドロシーは、子犬のトトといっしょに、家ごと、空にまきあげられてしまいました。 家がおちたのは、魔法使いや魔女たちのいるオズの国。わらでできたかかしに、ブリキのきこり、それに弱虫なライオンと友だちになったドロシーは、オズ大王に会って、カンザスに帰してもらうため、みんなで、エメラルドの都をめざします。 岸田衿子のはずむような文章と堀内誠一のカラフルなイラストで、ファンタジーの古典をあざやかに絵本化した愛蔵版。
「オズの魔法使い」というと、どうしてもミュージカル映画のジュディ・ガーランドと、名曲「虹の彼方に」を思い出してしまうのですが、この本も1969年に出版された本のリメイクだと知って驚きました。
堀内誠一さんが新鮮な感動をもたらしてくれています。
大作の短縮版なのでスピード感と同時に雑然としたところも感じてしまうのですが、それは完訳を読むことにして、堀内誠一さんの世界を楽しむことにしました。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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