第21回講談社絵本新人賞受賞作 みんな野球こぞう!
「力いっぱいバットをふったことがあるかい?」あの日、カボンバはぼくにそうきいた。ぼくはただくびをふるだけだった。でも、あの日から、ぼくはかわったんだ。
ガボンバは実力、人気ともにナンバー1のプロ・ホームランバッター。でも、ぼくはチームでいつも三振ばかり。いつかガボンバのような野球選手になりたいな……と憧れていたら、なんとガボンバのチームロッカールームに招待されて、本物のガボンバに会うことができた。象の男の子が憧れの選手(ガボンバも象!)に会って、野球への夢と希望を抱く、ちょっと珍しい動物スポーツものの絵本。登場する動物たちがいい顔しています。まわりの情景や小物も機知に富んだ演出が心にくいという感じで、わたしは一目でイラストが気に入ってしまいました。こういう丁寧に丹念に描きこまれたイラストの絵本って、日本では少ないのでは。
伝統から?日本の絵本作品には省略の美を系統とする、空間を残した平面的なイラストが多いと感じています。その代表がデフォルメされたデザイン的、漫画的な絵本。絵本とは本来読み手を思いながら、まごころを込めて誠心誠意作るという職人気質みたいな性格があるとわたしは勝手に定義しているので、絵に時間をかけたという気持ちの伝わる作品の方が省略されたデザインよりも胸を打つと思うのですが。いわむらかずおさんや島田ゆかさんの作品が根強い人気を誇るのは、絵に語る力があるからでは。そんな意味から、わたしはこの絵本に出会ったとき、牛窪良太さんのイラストにも絵を語る力、本来絵本が持つ意味のようなものを携えた絵本だという印象を抱きました。また設定が米国的なところも明るくて、スポーツ好きのわたしを魅了したかな。
動物ものが好きで、スポーツ好きなお子さん、特に男の子におすすめです。就学前後から。 (ムースさん 30代・ママ 男の子8歳、女の子3歳)
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