このおはなしは、氷がひとでや海月やさまざまのお菓子の形をしている位寒い北の方から飛ばされてやって来たのです。12月26日の夜8時ベーリング行の列車に乗ってイーハトヴを発った人たちが、どんな眼にあったか、きっとどなたも知りたいでしょう。これはそのおはなしです・・・・・・。 厳しく冷たい冬の自然と、そこで生きる動物たちが傲慢な人間たちへ投げかける警告。堀川理万子がひんやりと鋭く、ときには温かな目線で賢治のメッセージをみごとに表現した作品。
【著者プロフィール】堀川理万子 1965年、東京生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科卒業、 同大学院美術研究科修了。画家。タブローによる個展を定期的に開催するとともに、絵本作家、イラストレーターとして活動している。主な絵本に『ぼくのシチュー、ままのシチュー』『くまちゃんとおじさん、かわをゆく』『くまちゃんのふゆまつり』(以上、ハッピーオウル社)『あーちゃんのたんじょうび』『権大納言とおどるきのこ』『きえた権大納言』(以上、偕成社)、『げんくんのまちのおみせやさん』(徳間書店)『おへやだいぼうけん』(教育画劇)など。 絵を担当した絵本や読み物に、『小さな男の子の旅』(エーリヒ・ケストナー/作 榊直子/訳 小峰書店)『シロクマたちのダンス』(ウルフ・スタルク/作 菱木晃子/訳 偕成社)『きつねのスケート』(ゆもとかずみ/文 徳間書店)『すいせん月の四日』(宮沢賢治/作 岩崎書店)、『くるみわり人形』(石津ちひろ/文 E.T.A.ホフマン/原作 講談社)などがある。
▼「宮沢賢治の絵本」シリーズ
お話の始まりから、なんとなく独特な雰囲気が漂い、切々と読み上げられる言葉に、とてつもなく寒い場所の様子が伝わってきます。
ベーリング行きの列車に乗り込む乗客たちの特徴を、また堀川さんが適切に描かれていて、迫力満点です。耳慣れない動物たちの名前を何度も読み直し、顔の赤い太った男の口から出る、余りにもでっかい言動には、ちょっと呆れてしまいました。そして、少し雰囲気の違う青年の存在も、このお話の行く末を匂わせます。
宮沢賢治氏の、深い童話の世界は、大人も充分に楽しめます。 (おしんさん 50代・ママ )
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