人は毎日小さな感銘に助けられて生きている。最後の小説とエッセイを所収、人生の〈大切な瞬間〉を綴った作品集。
何事も成功する時を男時、めぐり合わせの悪い時を女時という――。何者かによって台所にバケツごと置かれた一匹の鮒が、やがて男と女の過去を浮かび上がらせる「鮒」、毎日通勤の途中にチラリと目が合う、果物屋の陰気な親父との奇妙な交流を描く「ビリケン」など、平凡な人生の中にある一瞬の生の光芒を描き出した著者最後の小説四篇に、珠玉のエッセイを加えた、ラスト・メッセージ集。
絵本ナビとしては異質感のある書籍ではあります。
向田邦子が手がけたドラマを幾つも見ていながら、著作としては初めて読みました。
しかも、「字のないはがき」に感動して手にしたという、不届きな理由でもあります。
この本に収録されている短編とエッセイの、小気味よい文章の中から、向田邦子の醸し出すドラマ性を感じます。
そのまま絵と融合したら、「字のないはがき」のような作品になるのでしょうか。
人生の小景として味わいましたが、突然の事故死を知っているだけに、日常的な風景のあっけなさも感じました。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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