題名の「おもいのたけ」って何だろう? そう思う間もなく、冒頭から奇妙な音が聞こえてきます。 “オンドロロン オンドロロン” タヌキが音に誘われるままに洞窟の中に入っていくと、 そこには小さなキノコたちがはえています。 暗闇の中、タヌキはキノコがキツネの顔に見えて、思わず叫びます。 「あんたが、だいっきらいなんだ!」 タヌキの「おもいのたけ」が止まりません。 「ボクは、あんたの細い目がきらいだ。得意そうな口もきらいだ〜!」 タヌキが帰ると、キノコたちがほんの少しだけ大きくなります。
その後も“オンドロロン オンドロロン”の響きに誘われて、次々に動物たちが思いをキノコにぶつけていきます。 キノコはどんどん膨れ上がっていき・・・。 さて、この不思議なキノコはその後どうなる?そしてその正体とは?
まず、動物たちが抱えている「おもいのたけ」がそれぞれ意外な感じで面白いのです。 よっぽど言いたかったんだなあとか、ずっと言いたくても我慢していたんだなあとか、 一度言い出したら止まらなくなっちゃってる・・・とか。 その後ちょっとすっきりしちゃっている感じがもっと面白い。 更に、思いっきり吐き出しちゃった「おもいのたけ」が思わぬ形で目の前に現れるところも。
言葉に出すのって本当に難しい。 「言えばよかった」と思ったかと思えば、「言いすぎちゃったかな」って反省してみたり。 色々頭の中でぐるぐるしていた子どもの頃を思い出します。 でも子どもたちだって、こんな風にちょっと悩みながら、ちょっと後悔しながら、そしてちょっと恥ずかしい思いも しながら「おもいのたけ」が上手に人に伝えられるようになるのかな、と思うのです。
そして、その全ての感情が織り交ざった表情や、正体不明なキノコの存在や奇天烈な展開を田島征三さんが 大胆に可愛らしく絶妙に表現してくれていて、楽しくて仕方がありません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ある日、タヌキは奇妙な"音”を耳にする。 オンドロロン、オンドロロン 音に誘われるまま洞窟の中に入っていくと、 そこには奇妙なキノコがいた…。
タヌキはそのキノコがキツネの顔に見えて、 「あんたなんか、大っ嫌いだ〜〜!」 キノコに叫んだ。
タヌキが帰ったあと、洞窟には次々と動物たちがやってきて、 それぞれ抱えている「思い」をキノコに向かって叫んでいく。
動物たちの思いを浴びたキノコは、どんどん膨れ上がっていく。
祭りの日、ついにキノコは飛び出して、動物たちに襲いかかる!
高学年向けの絵本選びには迷いますが、この絵本は高学年はもちろん、どの学年でも大丈夫です。タヌキが大嫌いなキツネの悪口をキノコに叫びます。キツネも同じように悪口を叫ぶのですが、後でバッタリ2匹は道で出会いお互い笑顔でお祭りに行こうと誘うのです。このシーンのお互いの表情がとってもユーモラスで子供達からも笑い声が上がりました。大人でもこんな経験ってあるな〜とふと思いました。リスの子が、お母さんから「お兄ちゃんなんだからしっかりしなさい」といつも言われ、「自分だって子供なんだから〜てん」と叫びます。このシーンでは、ある男の子がウンウンと何度もう頷いていました。家でよく言われているんだな〜と感じました。私自身も気をつけねばと思いました。 読み手も聞き手も、お話にグイグイ引き込まれ、最後の結末はとてもすっきりします。 (ブルーグラスさん 40代・ママ 女の子13歳、男の子11歳)
|