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南太平洋トンガ王国のヴァヴァウ諸島には、毎年7月になると、出産と子育てのため、南極の海からたくさんのザトウクジラがやってきます。 この本は、ヴァヴァウ諸島の海での、あるクジラの親子のお話を、美しい写真でつづった絵本です。撮影は、世界中の海洋ほ乳類や大型魚類の撮影を中心に活動している越智隆治さん。越智さんが実際に体験した出来事を写真におさめたドキュメンタリーです。
絵本を開くと、まず絵本に広がる深い海の青に圧倒されます。そして、その中をザトウクジラたちが翼のように大きな胸びれを使って優雅に泳ぐ姿は、本当に神秘的。ため息が出るような美しさです。 ある日、1匹の子どものクジラが、遊びに夢中になって人間のボートについてきてしまいます。お母さんクジラが気づかないうちに10km近くもはぐれてしまったのです。ボートに乗っていた人間たちは、慌てて一緒に元の場所に戻りましたが、お母さんも子どもを探しに行ってしまった後でした。 お母さんとはなればなれになってしまったら、子どものクジラはおっぱいが飲めないで、大きくなれずに死んでしまうでしょう。けれども、広い広い海で、いったいどうやってお母さんクジラを探すのでしょうか。人間たちの力を合わせた迷子救出劇が始まります。
最後の場面で寄り添うクジラの親子。大きな背中と小さな背中。 ゆっくりと泳ぎながらどんな話をしているんでしょうか。大冒険の報告か、もしかしたら、みっちり叱られているのかもしれませんね。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)

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お母さんと子どもの愛情あふれるやりとり
南太平洋のトンガ王国には、たくさんのザトウクジラが、 出産や子育てのためにやってきます。 産まれた赤ちゃんは、お母さんといっしょに、 南極の冷たい海へ向けて旅に出ます。 そのきびしい旅にたえられるように、 たくさんおっぱいをのんで、大きく成長しなければいけません。 子育てをしているあいだ、お母さんは何も食べないといわれています。
ある日、子どものクジラは、まいごになってしまいました。 お母さんとはなればなれになってしまったら、 おっぱいがのめなくて、大きくなれず、南極へのきびしい旅のとちゅうで、 死んでしまうでしょう……
元気な子どものクジラとやさしいお母さんの愛情あふれるやりとりを通じて、 親子のふれあいや命の大切さが実感できる写真絵本です。
【写真と文】越智隆治(おちたかじ) 1965年生まれ。慶應義塾大学卒業後、産経新聞写真報道局に在籍。在籍中に、東京写真記者協会賞、新聞協会賞などを受賞。1998年にフリーとして独立。海洋ほ乳類や大型魚類の撮影を中心に、世界中の海をフィールドにして活動を行っている。特に、トンガ王国のザトウクジラは、2004年から毎年訪れて撮影を続けている。
編集者からのおすすめ情報 美しい海と、海中でのザトウクジラの親子の愛情あふれるようすは、トンガ王国に、8年も通い続けた作者ならではの写真です。ぜひ、ダイバーの方々にもご覧いただけたら幸いです。
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南太平洋トンガ王国のザトウクジラ、と副題にあります。
ザトウクジラの親子を撮影していた著者が遭遇した救出ドキュメントでもあります。
比較的警戒心のない親子クジラだったからか、人間の撮影ボートについてきてしまい、
親からはぐれてしまったらしい子どものクジラ。
もちろん、クジラの生態に詳しい著者たちは、懸命に親子を引き合わせようとします。
こんなこともあるのですね。
当の本人たちにはどうも自覚がないようで、そのあたりのギャップも興味深いです。
深い海の色も、水中写真ならではの迫力です。
水中ならではの光線も見事ですね。
何より、ハラハラドキドキの人間の方の息遣いまで感じられます。
クジラへのまなざしもぜひ、感じ取ってほしいですね。 (レイラさん 50代・ママ 男の子22歳、男の子20歳)
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