講談社児童文学新人賞受賞作家のやさしく、すこやかな、感動作。
そうか、少年って、こんなふうにおとなになるのか。
夜の神様が、どうかどうかぼくが今話したことをすっかり飲みこんでくれますように。
第45回野間児童文芸賞受賞 第23回坪田譲治文学賞受賞
椰月(やづき)美智子さんのことは、この『しずかな日々』という作品を読むまで、
もっといえば田村文さんが『いつか君に出会ってほしい本』で紹介していて、初めて知った。
デビュー作『十二歳』で第42回講談社児童文学新人賞を受賞(2002年)、
そのあと2006年に発表した『しずかな日々』で第45回講談社児童文芸賞と
第23回坪田譲治文学賞をダブル受賞している。
つまり、これらの作品でいえば児童文学者ということになるのだが、
その後の著作をみていくと大人向けの作品も書いているから幅広い。
この『しずかな日々』も小学5年になった「ぼく」が主人公であるから、児童文学の範疇だとは思うが、
視点は「ぼく」が大人になってその頃を振り返る回想になっているから、
大人の読者もきっと感銘を受けるはずだ。
何故なら、どんな大人にも小さかった頃の自分がいるのだから。
小学5年の新学期が始まって、それまでおとなしかった「ぼく」に突然話しかけてきた男子がいた。
彼の名は押野君。実にのびやかな元気のいい男子。
押野君に誘われるまま、「ぼく」は初めて草野球をすることになる。
「ぼく」の父は生まれて間もなく亡くなった。なので、母と二人の生活だ。
その母がなんだか奇妙な仕事を始めて、「ぼく」は母の父親、つまりはおじいさんの家で
二人で暮らすことになる。
おじいさんが暮らす、大きな、古い家。
そこで「ぼく」はなんとものびやかな時間を暮らすことになる。
何か事件が起こるわけでもない。書かれているのは、もしかしたら誰もが経験したかもしれない、
小学生の頃の夏休みの時間。
でも、どうしてだろう、とっても懐かしい、けれど、それは戻っては来ない日々でもある。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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