笑いが止まらなかった第一作目『わがはいはのっぺらぼう』とはうって変わって、自然界の美しさとおそろしさを感じる「怪談えほん」です。 でもそこは飯野和好さんの絵と富安陽子さんの文! おそろしいんだけど美しい、口をとがらして踊る様子はなんだか可愛いゆきおんな。 春が来るといつしか消えてしまうゆきおんな。
ほうら、もう ぎんいろにかがやく ながいかみの ひとすじまで くっきりとみえるよ しろいきものに、きんのおび。 つめたいひとみは あおくかがやき、 くちびるは、ゆきにさく さざんかみたいにあかい。 そうさ、これがゆきおんなというものさ。
濃紺の闇に舞う吹雪。 ひゅーっびゅおおぉーと雪が吹きつけ、バタバタと戸口が鳴る音が聞こえてきそうです。囲炉裏端でおばあちゃんが声をひそめ語るのを、息をのんで聞きいる子どもたち。背中がぞわぞわして・・・そんな様子が目に浮かびそう。
こんなこわそうな絵本、うちの子にはとても・・・、と思われますか? いえいえ、子どもって、こういう絵本、実は大好き!だと思いますよ〜。 この磁石のような力・・・子どもには伝わるに違いありません。 何より、富安陽子さんの言葉からはまるですぐそこにだれかがいるような体温を感じるんです。 一度読んでみると、最初は知らん顔をしていても、心のどこかで気になる絵本。 そんな存在になりそうな絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
北風が山をふきぬけ、風がひゅーるひゅーると歌いながらダンスを踊るうちに…白い影がふわりとたなびくと、ほうら、ゆきおんなが生まれるんだよ。 冷たいひとみは青く輝き、唇は雪にさくさざんかみたいに赤い。 ある夜、ゆきおんなは人間の家を見つける。そして音もなく近づいて…。 冬の厳しい寒さ、やがて訪れる春。美しい山の風景とともに、ゆきおんなの恐ろしさやはかなさが描かれます。
雪の降る夜に、寝つけない子どもにとつとつと語り聞かせるおぱあさん。
そんなシチュエーションが想像されるような一人語りの世界です。
その語り口調が、声に出してみると自分の耳にもとても心地よく響いて来ました。
物語性のある内容ではないのですが、飯野さんの泥臭い絵が 味わいを深めていて、納得感のある絵本でした。
私は何となく、最後に語りを加えて見たくなりました。
「おや、この子ねちまったよ。」 (ヒラP21さん 50代・パパ )
|