意気ほとばしる接戦!にらみあう二人の男の子の気迫が表紙からびしびし伝わってくるこちらの本は、くすのきしげのりさんの新作よみもの。臨場感あふれる山本孝さんが描く表紙を目にした途端、すぐにページをめくりたくなってしまうこちらは、いったいどんなお話なのでしょう?
主人公ジュンのクラス四年三組では、「うでずもう」がはやっています。九月のある日、十月十日に行うクラスのイベントを決める話し合いで、「輝け第1回四年三組うでずもうナンバー1決定戦」が開催されることが決まりました。クラスのみんなが盛り上がる中、ジュンだけはため息をついてゆううつな気持ちです。なぜならジュンは「うでずもう」が弱いのです。そんなジュンに放課後、担任の山下先生が大会の日まで毎朝一緒にトレーニングしないかと提案します。
来る日も来る日もたとえどしゃぶりの雨がふっても、公園で待っていてくれる先生。トレーニング内容は、ランニング、腹筋運動、うで立てふせ、けんすいなど…。 そしていよいよ迎えた「うでずもうナンバー1決定戦」の日、1度もクラスメートに勝ったことのないジュンは、どこまで勝ち進むことができるのでしょうか。
2013年度の課題図書になっているくすのきさんの絵本『メガネをかけたら』でも、子ども達思いの素敵な先生が何人も出てきましたが、今回登場する山下先生のしっかりと丁寧に子ども達に向き合う姿には、読者である私たちも頼もしい気持ちになり、強く励まされる思いがします。また山下先生だけでなく、家族の在り方や、先生と親との信頼関係など、子ども達の身近にいる大人の姿勢が、子ども達の心の成長に大きく関わっている気がしてなりません。それを感じるのは、お話の最後の最後に描かれる「うでずもう大会」から二十年後の四年三組再会の場面。そこには、ジュンと私たち読者が新たに知ることになる驚きの事実が待っているのですが、心が震えると同時に今目の前にいる子ども達に何ができるかという事を考えさせられます。
なかなか自分に自信が持てない子ども達と、そんな子ども達の挑戦を願う大人の方へ、また教室で先生が子ども達に読んであげるのにもおすすめの1冊です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
うでずもう大会に向けて猛特訓が始まる!
弱虫で泣き虫のジュンは、何事にも自信のない少年でした。ある日、クラスで「うでずもう大会」をすることになりました。ジュンはうでずもうが大の苦手、一度も勝ったことがありません。そんなジュンを見て、担任の先生が「毎朝特訓をしよう」と提案します。お姉ちゃんは、最初は続くわけないと馬鹿にしましたが、一緒に付き合ってくれることになりました。いよいよ、三人の特訓が始まります。 さて、ジュンは、最後まで特訓を続けることができるのでしょうか。そして、本当に強くなれるのでしょうか?
編集者からのおすすめ情報
心に残る作品の多い作家くすのきしげのりさんの児童読み物です。2012年10月、毎日新聞大阪本社版朝刊「読んであげて」に連載された作品に加筆し再構成してまとめました。「こんな先生がいたらいいな」と連載中も大好評でした。学校内でいろいろな問題が起きる昨今、このような作品が待望されていたのだと思います。また、「あきらめなければ、きっとかなう」という、こどもたちへの熱いメッセージのこめられた作品です。
ちょっと出来すぎの話のように思えますが、最後まであきらめないこと、継続する意志が力に変わっていくことが、想像以上に自分を変えてくれることには納得です。
そして山下先生の素晴らしさに感動しました。
先生自身も、諦めないで継続することを、クラスの子どもたちに行っていたのですね。
純粋に受け取ってほしい物語です。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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