世界26か国の食べものを紹介した、楽しい大判絵本!
出版社エディターズブログ
2023.10.23
日本をはじめ、世界でも注目を集める韓国文学。今回は評論社で刊行した韓国文学『優等生サバイバル』からみた韓国の高校生のリアル!を知るべく、翻訳者のキム・イネさんと現役学校司書の山下ちどりさんを迎えて鼎(てい)談をしました!
韓国の高校生活のハードさや放課後の楽しみ方について、本の内容に加えて興味深い話題が盛りだくさん。連載は3回に分けてお送りし、韓国文学と高校生活に興味がある方々に楽しいお話しをお届けします。本と一緒にお楽しみください♪
出版社からの内容紹介
成績に一喜一憂する寝不足な日々。
さらに、はじめてのホントの恋まで! さあ、どうする?
首席で進学校に入学してしまったジュノ。入学初日から生徒を成績でランク付けする学校のやりかたに違和感を感じながらも、高校生活が始まる。父は田舎で病気の療養中。母は父についていき、叔父とふたりで暮らしている。
入学してからはトップをとれず、思い悩む日々。家計を思い、塾にも行っていない自分が、この学校で競い合っていけるのかと不安になる。同じ中学出身の親友、ゴヌに誘われて入った時事討論サークル「コア」だけが、晴れやかな気持ちになれる貴重な場だ。びっくりするくらい博識で、知的な刺激を与えてくれるボナ先輩、まっすぐな性格の同級生ユビン、そしてゴヌ。「コア」の仲間には、おしこめた不安や焦りも口に出すことができた。ジュノは次第に、独特なユーモアでまわりを笑わせるユビンに惹かれていく。
ところがある日、ユビンから、転校を告げられる。観光経営学科のある学校に転校し、卒業したら大学には行かず、旅行会社に就職するつもりだと。将来は自分の会社をつくりたいと言うユビンが、とても大人びて見えた。「ぼくは、はっきりとした目標があって大学に行こうとしているのだろうか」――。
テスト、課題、進路、SNS、そして恋……。1日は24 時間。やらなきゃいけないこと、考えなきゃいけないことは満載!! ハードな高校生活を生き抜くために、“ 優等生” のジュノが見つけた法則とは?
未来のための今も、今のための今も、どっちも大切なぼくたちの時間。
翻訳者 キム・イネさん×山下ちどりさん×評論社
(キ)韓国の高校は、入試を行う高校も一部にあるのですが、全体として受験がなくて。日本で言う学区制なんですね。つまり、住んでいる学区の中から自分の行きたい高校を選び、そこで抽選が行われるシステムなんです。生徒たちの間では「くじ引き」と表現されたりもします。ジュノたちが通っているトゥソン高校もそうなんですよ。だから私も本の中の表現でも「合格」という言い方にはなっていません。抽選だからどの学校も平均的になるんですね。でも、たまたま富裕層が多い地域に住んでいると、優秀な子が集まっている場合もあるんですよ。ジュノたちの通っているトゥソン高校も都市部なので、割と優秀な子たちが集まっていて。でも、いわゆる「偏差値」で決まっているわけではなくて。
(ち)ジュノはトゥソン高校にトップの成績で入学をしたので、入学式でスピーチをしましたが、くじ引きで入ったのに、どのようにしてトップだとわかったのでしょうか?
(キ)ほとんどの学校で入学前にクラス分けテストが行われるようです。
(評)なるほど、だからジュノとビョンソは違うクラスなんですね!
(ち)クラス分けも特進クラスや成績順ではなくてまんべんなく?
(キ)本の中には書かれていないのですが、クラス分けは、まんべんなく行われるのが基本のようです。そしてトゥソン高校の場合、そこからトップ30人に特別自習室の利用が許可されたんですね。
(評)放課後、そこで勉強をするという“正読室”ですね。日本では部活での活動も、大学受験では総合型選抜などで評価されたりしますけど、韓国は部活はさかんではないのでしょうか?
(キ)韓国はまずは勉強。スポーツするにせよ、音楽にせよ、勉強優先の傾向が強い。だから部活も毎日する、ということはないんですね。ジュノたちのサークルも活動日がすごく少ないと思いませんか?
(評)そうですよね。
(キ)年に何回出ればいい、レポートを書けばよいとか。ボナ先輩が内申に関係のない活動に参加しようとして親に反対されるという話もでてきました。
(評)親も教育熱心な印象がありますよね。よい学校がある地域にそのために引っ越したり、子どものために部屋を借りたりということもあるそうです。ボナ先輩の家もなかなか厳しそう。でも、本書ではそうでないかかわりをする親も出てきます。ぜひ、親子で読んでいただきたい本です。
将来を決める大切な時期。揺れ動く世代の子どもに接するのはとてもむずかしいことです。本書にはさまざまかかわりをする親が出てきます。親世代が読んでも気づきがあったというお便りもいただく本書。「自分は子どもに同じように言ってあげられるかどうか」とも思わせる、主人公・ジュノの両親の言動は、自分の価値観をはかる鏡にもなってくれます。
この人にインタビューしました
翻訳家。大学講師。韓国梨花女子大学通訳翻訳大学院卒業。通訳翻訳業を経て、2005年からドラマや映画の字幕翻訳を始める。
主な字幕翻訳作品に「応答せよ1994」「ミンセン〜未生〜」「師任堂、色の日記」(以上、すべてドラマ。すべて共訳)。「隠された時間」「君の結婚式」(以上、映画)などがある。
この人にインタビューしました
現役学校司書。stand.fm「ちどりの学校図書館ラジオ」パーソナリティ、絵本ナビスタイルにて「現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本」の連載コラムを執筆。
みどころ
シングルマザーに育てられた17 歳の少年ノウル。16 歳で自分を生み、ひとりで育ててくれた母に、だれよりも幸せになってほしいと願っていたのに、恋人候補として急浮上したのは、親友の兄、母より6歳も年下の、やっと就職が決まったばかりの若者だった。母さんに平凡なパートナー≠みつけて普通の幸せ≠手に入れてほしいのに――。
「平凡≠チてそもそもなんなの?」と親友ソンハにたずねられ、その問いについて考え続けることで、ノウルがみつけたものとは。
寒い冬の空の下、少年が次の季節へ歩き出すまでの物語。
イ・ヒヨン 作 / 山岸由佳 訳