絵本紹介
2024.04.22
春、私たちは、植物にたくさんの力をもらいます。咲き誇る桜は、これからはじまる日々を祝福し応援してくれているよう。あか、しろ、きいろ、色とりどりのチューリップに気分が弾んだり、まるで微笑んでいるようなたんぽぽに話を聞いてもらったり。新しい生活のスタートに硬くなりがちな心をほぐし寄り添ってくれるような春の草花たちは、かけがえのない存在です。
今月は、春の植物の魅力あふれる絵本をピックアップしました。
まず植物の進化をたどってみると……その起源は生きもの、地球の誕生へと遡り、私たち人間と同じ点からはじまっていることがわかります。一方で植物の源である「種」からその成長を見ていくと、芽を出し花を咲かせ、野菜や果物が成り、再び種が。写真で追ってみると、人間とはずいぶんと違う成長の過程に改めてびっくり!
よつば、桜、たんぽぽ、春の草花が主役のおはなしは、瑞々しい生命力と季節のよろこびに満ちていて、優しくあたたかな気持ちに包まれます。
春を彩る植物たちをぐっと身近に感じられる絵本、大人のみなさんにもおすすめです。
出版社からの内容紹介
生命誕生は植物から始まった!植物の視点から地球の歴史を振り返ると、 動物の視点とは全く異なる生物の歴史が見えてくる。絵で語る植物の進化絵本。
この書籍を作った人
1959年生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、米国イェール大学理学部修士課程修了、英国ブリストル大学理学部Ph.D. 課程修了。博士(理学)。国立科学博物館・標本資料センター・コレクションディレクター、分子生物多様性研究資料センター・センター長、副館長・研究調整役。群馬県立自然史博物館・特別館長を兼務。恐竜など中生代の化石から読み解く爬虫類、鳥類の進化を主な研究テーマとしている。著書に『日本恐竜探検隊』(岩波書店、共著)、『深読み! 絵本『せいめいのれきし』』(岩波書店)、『恐竜学』(学研プラス)、『恐竜の魅せ方 展示の舞台裏を知ればもっと楽しい』(CCCメディアハウス)ほか、図鑑の監修、「恐竜博」など展覧会、博物館の展示監修も多数。
出版社からの内容紹介
私たちは、栗や大豆などいろいろな種を食べています。多くの果物や野菜には、種が含まれています。こういった種を土にまいたら、はたして……。日ごろ食べている小さな粒の大きなエネルギーに気づく写真絵本です。
出版社からの内容紹介
おどろきは、身近なところにある!植物観察家・鈴木純が、シロツメクサの美しさと不思議を紹介し、実態にせまる写真絵本。観察により気づきはおどろきを生み出す。この感動こそ、科学への第一歩です。知ることでどんどん好きになっていく、ともだちと話しているようにたのしめる1冊!
みどころ
あなたはよつばを見つけたこと、ある?
もんしろちょうから聞いたよつばの秘密のお話、こっそり教えてあげる。
「あれ? きみの はっぱは ぼくと ちがうみたい」
「あたしたち、みんな さんまいよ」
みんなと違うからと、ひとりぼっちになってしまったよつばの子。でも、よつばの子は自分ではよくわからない。そんなある日、もんしろちょうがふわりとやってきて、言います。
「あら、あなたの はっぱ、かわいい。おはなみたい」
水たまりにうつった自分の姿を見たよつばの子は、(ああ、とっても かわいい)と心から思い、嬉しくなったのです。よつばの子にはあたたかな笑顔が浮かんでいます。すると、ふしぎなことが起こります。よつばの子のまわりには、友だちがどんどん集まってきて……。
よつばを見つけるのが得意な女の子をとおして語られる、しろつめくさのふんわり優しいお話。よつばの子の気づきをきっかけに、他の子にもだんだん自分の不安が見えてきて、それでも少しずつ自分が好きになっていくのです。淡い色彩で、はかなげな雰囲気で描かれるしろつめくさの原っぱだけれど、そこはいつも笑顔でいっぱい。一面に生えているしろつめくさの葉っぱを眺めながら、私たちはいつでもその話を思い出すことができるのです。
この書籍を作った人
福井県生まれ。北海道教育大学卒業。札幌でディスプレイデザインなどの仕事をして、28歳であとさき塾をきっかけに上京。大好きな池波正太郎の通った老舗蕎麦屋「神田まつや」でアルバイトをしながら、絵本を学ぶ。主な絵本に『ぎょうざのひ』『えんぴつのおすもう』『ぜったいわけてあげないからね』(偕成社)、『のりののりこさん』『けしゴムのゴムタとゴムゾー』(BL出版)、『まんまるいけのおつきみ』『おならおばけ』(講談社)、『しゃもじいさん』『ぬかどこすけ!』(あかね書店)、『まあちゃんとりすのふゆじたく』(アリス館)、『かたつむりくん』(風濤社)、『おにぎりのひみつ』(フレーベル館)、『おもちのかみさま』(佼成出版)、『おとうさんのこわいはなし』(岩崎書店)など。挿絵の仕事に『どろろんせんせい』シリーズ(作:苅田澄子)(鈴木書店)などがある。陶芸、畑仕事が趣味。札幌市在住。
みどころ
はるきたよ はるきたよ
ひらひらと春風に舞う花びらに、最初に気づいたのはテントウムシ。
うれしくなって、川面に浮かぶ桜のふねに乗り、山の仲間たちに春を知らせに行きます。
はるきたよ はるきたよ
その声に気づいたともだちのハチやチョウたちも、やっぱりうれしくなって。
同じく桜のふねに乗って、てんとうむしに続きます。
ニヤトコやカタクリの花々は、目を細めて虫たちの旅を見守ります。
いいたびに なりますようにーー。
やわらかな風、包み込むような優しい日差し。
虫、鳥、動物、草花、川や風までも、みんな、首を長くして春を待っていたのでしょう。うたい、飛び跳ね、はしゃぎます。時々「よりみつ」なんかもしたりして……!
生きものや自然にとって芽吹き花咲く季節を迎える喜びがどれほどのものか、のびやかに躍動する絵と言葉に感じ入ります。作者はきくちちきさん。紅葉の季節を鮮やかに描いた『もみじのてがみ』に続き、本作も春の自然の生を讃えたまぶしい一冊となりました。
ゆっくりと進んでいく桜のふね。虫たちの目の前に広がる麓の風景は、息をのむ美しさです。雄大な春の山の旅を、生きものたちと一緒に味わってくださいね。
この書籍を作った人
1975年北海道生まれ。絵本作家。2013年『しろねこくろねこ』(Gakken)でブラチスラヴァ世界絵本原画展、金のりんご賞を受賞。2019年『もみじのてがみ』(小峰書店)で同展金牌を受賞。他に『しろとくろ』(講談社)、『でんしゃ くるかな?』(福音館書店)、『やまをとぶ』(岩波書店)、『ねこのゆきちゃん』(ミシマ社)など。現在は神奈川のいろいろな生きものが暮らす里で、家族と山を眺めながら、創作をしている。
みどころ
たろうくんがあそんでいると
すずめがたんぽぽの上でさわいでいます。
すずめの声にみみをすますと、
「たんぽぽは たんぽぽ
たんぽぽは たんぽぽ
たんぽぽは たんぽぽ」
楽しそうなすずめたちにあわせて、
たんぽぽたちも
ぴん、ぴん、ぴーんとはなびらをのばします。
そのたんぽぽたちの上を
歩いているのは、小さなありんこ。
今度は、たんぽぽの声にみみをすますと、
「ありんこは ありんこ
ありんこは ありんこ
ありんこは ありんこ」
愉快な掛け声のリレーは、すずめから始まり、
たんぽぽ、ありんこ、ねこたち、そしてたろうくんへ。
はずかしがっているたろうくんも
最後はまけじと・・・。
おくはらゆめさんの描く、春の絵本。
くりかえしの言葉が楽しくて、
春がでんぐりがえししてぐるんぐるん
ころがって、ごろ、ごろ、ごろーん。
たろうくんの目線で描かれる
のびのびとした生き物たちの賛歌。
青空を眺めながら小さな命がすべて愛おしく感じる
かわいらしい絵本です。
この書籍を作った人
1977年、兵庫県生まれ。辻学園日本調理師専門学校卒業。2005年、MOE絵本・イラスト大賞 年間グランプリ佳作、2006年、第12回おひさま大賞最優秀賞、2007年、第8回ピンポイント絵本コンペ入選。『ワニばあちゃん』(理論社)でデビュー、同作で、第1回MOE絵本屋さん大賞新人賞入賞。『くさをはむ』(講談社)が第41回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他主な作品に、『チュンタのあしあと』(あかね書房)、『まんまるがかり』(理論社)『やきいもするぞ』(ゴブリン書房)など多数。
出版社からの内容紹介
植物のスーパーパワーを知っていますか? 二酸化炭素を吸って酸素を吐き出し、動物や鳥にすみかや食べ物を提供し、自然界のバランスを絶妙に保ちながら、衣服になったり、家具になったり、薬になったりして、人間の生活に役立っています。植物への知識を深め、どうすればこの貴重な存在を守っていけるのか考える科学絵本です。
文:竹原雅子 編集:木村春子