「なつめやし」という果物の名を、日本の子どもたちはあまり聞いたことないかもしれません。 表紙には、頭に布をまいた少年。木の上をみあげています。 作者は「旅する作家」、市川里美さん。 旅行で訪れたパリにそのまま移住して以来、海外で絵を描き、世界で出版された絵本は70冊を越えます。 そんな作家さんが「オマーン」というアラビアの国を何度も訪れて作った絵本とは……?
オマーンの山のふもとにすむ少年、マンスールは、いっこうに実をつけない一本のなつめやしの木が気になっていました。 「どうして、あのなつめやしの木に、実がならないの?」 おかあさんに尋ねてみて知ったのは、あの木がメスの木だということ。オスの木が近くになくて花粉が飛んでこないから、あまい実をつけられないのだということでした。 なつめやしのおむこさんを探しにいきたい!と思い立ったマンスールは、オスの木をわけてもらえるよう、コーヒーポットを手みやげに、山をいくつもこえて、別の山のふもとに住む老人の元へ歩いていくことにします。 さあマンスールはおむこさんの木を手に入れられるのでしょうか? その前に、目的地にはたどりつけるのでしょうか――?
トラブルつづきのマンスールの旅。一緒に歩くロバ、ハムザは、頼りになるような、ならないような……小さな男の子にぴったりの気のおけない相棒です。 日が暮れて野宿をするときも、のどが渇いて水場をさがしにいくときももちろん一緒。
市川里美さんの絵筆によって、土のぬくもりあふれるオマーンの暮らしが描き出されていきます。 とれたてのなつめやしの実って、きっととても甘くておいしいのでしょう。 そしておいしい実がなることは、マンスールの家族だけではなく、村に住む人々にとってよろこばしく、食料としても助かることにちがいありません。
「おいしいなつめやしが食べたい!」という願い。 それはマンスールの冒険の原動力であり、まだ小さな男の子であるマンスールに長旅をさせるお母さんやお父さん、オスの木を持ち帰ることを待つ近所の人たちの素直な気持ちのあらわれなのかも。 古いコーヒーポットが価値を持つことや、家族団らんの風景など、私たちの価値観とはまたちがう風景に出会えるのが本書の魅力でもあります。 読み終えたら「オマーン」という国について調べてみるのもおすすめです。
マンスールとハムザのように、動物と助けあいながら暮らす日々は、動物好きの子どもたちにはあこがれかもしれませんね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
アラビアの山のふもとに少年マンスールは暮らしています。マンスールはやしの木を見上げ、いつもいつになったら実をつけるのだろうと思っていました。おかあさんに聞いてみると、その木はなつめやしのメスの木なので、オスの木がないと実をつけることはできない、と教えてくれました。マンスールは、じゃあ、おむこさんをさがしに行こう、遠くの山まででかけることにしました。 世界中を旅し、その経験をベースに絵本を創作している市川里美さん。この作品は、市川さんが、アラビアのオマーンを何度も訪れて作った絵本です。アラビアという、とおく離れた国々はどんな暮らしをしているのでしょう。中近東というと、紛争が多発し怖い地域と思われがちですが、絵本にでてくるのは、家族を中心に、素朴に、心ゆたかに生きる人たちです。その土地のなかにある自然や暮らしを大切にしながら、子どもらしく家族を助け、わくわくした心を大切に生きている少年マンスール。世界のどこに行っても、平和に、けなげに生きる人々がいることをやさしく伝えてくれる作品です。
中東の国、オマーンの山に住む、マンスール少年が主人公です。
やぎの世話をしているマンスールは、なつめやしの木に実がならないことに気づくのです。
お母さんに尋ね、それはメスの木だからオスの木が必要と知り、
遠いむこうの山まで行くことにするのですね。
「おむこさん」という表現に納得です。
ロバに乗って出かけるマンスール、立派です。
道中休憩での水筒、皮袋みたいで、びっくりです。
野宿の場所を探し、ロバをなだめ、と、しっかりとした姿が頼もしいです。
ハプニングもありますが、気難しいおじいさんとも交渉し、無事ミッション達成とは拍手!です。
もちろん、オスの木はすぐには育ちませんが、マンスールの成長も伺えて、嬉しいです。
小学生くらいから、マンスールの勇気、感じてほしいです。 (レイラさん 50代・ママ )
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