ウィリアム・グリルが、シャクルトン隊への愛情とリスペクトをもって、色鉛筆で描き出した大型絵本。 これまで大人には知られてきた大冒険を、子どもにとって親しみやすい美しい本にしたことが画期的な絵本です。 著者は、この作品で史上最年少(25歳)で2015年度ケイト・グリーナウェイ賞を受賞しました。
本書は20世紀初頭、第一次世界大戦が始まったばかりの頃に、南極大陸を横断しようとしたアーネスト・シャクルトンの探検隊の話。南極大陸横断は成功しなかったにもかかわらず、彼らの冒険が世界中に知られるようになったのは、28人の男たちが南極の流氷帯にとじこめられてから約1年半ものあいだ極限状態に耐え、帰る船(エンデュアランス号)を失っても、全員生きて帰還したからです。
まず、ウィリアム・グリルがこまかく描き出す、探検物資や船の部位などページいっぱいの図解に心が躍ります。ならべられた1つ1つの道具や、隊員たちの生活ぶりはじっくりながめて飽きません。 一方で大画面に描かれる、氷の海やブリザード(激しい雪嵐)がシャクルトン隊の苦闘を想像させます。
船が沈没し、7日7晩重いそりを引きつづけへとへとになりながら安全な氷板をさがす旅。3か月すごした氷上のキャンプを捨て、氷の海を氷から氷へ。108時間ボートを漕ぎ続け、飢えと脱水症状の末に踏みしめた16か月ぶりの大地! 隊員たちの体調は悪化し、隊長シャクルトンはサウスジョージア島の捕鯨基地まで助けを求めにいくことを決心します。救命ボートで、選び抜いた数名と千数百キロの航海へ挑むのですが……。 個人的には、残された大多数の隊員たちが、即席の避難所を作ったページに感動しました。なんとボートをひっくりかえすアイディアで、底に煙突をつけ、中で快適に過ごせるようにしたのです! 本当に隊長は戻るのか、極めて心細い状況。けれどそんな中で毎週土曜にはバンジョーを弾いて演奏会を楽しむようすが描かれます。荷物を減らす中でも楽器は捨てなかったのですね。 探検の詳細に興味をもったら、『エンデュアランス号大漂流』(あすなろ書房)を読んでみることをおすすめします!
絶望の淵で正気を失わず、生きぬいた強さの秘密は何だったのでしょうか。おいしそうな料理のにおい、犬ぞりレースや演奏会、陽気で楽天家の仲間、それぞれの目的と責任感……。本書は、極限状態で人間をどれだけ人間らしくさせるものは何かということも教えてくれます。 最後のページで、シャクルトン隊を支援するはずだった「ロス海支隊」の存在にちゃんと触れられていることにも注目です。 100年以上前の実話に、色鉛筆で描きこめられた冒険のエッセンスを、存分に味わってくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
二十世紀初頭、GPSも携帯もない時代。 船が座礁して南極の氷上にとりのこされた二十八人の乗組員たちは、 いかに耐え、いかに生き延びたのか。 実話にもとづく、とほうもない勇気と冒険の物語。 2015年「ケイト・グリーナウェイ賞」受賞。
大判サイズに描かれたおしゃれなイラストに惹かれ、手に取りました。
南極大陸を横断しようとしたエンデュアランス号と、その勇敢な隊員たちのお話です。
画面いっぱいに、ダイナミックに描かれるイラストに魅了されました。その一方で、乗組員や連れた犬までもが一人一人紹介されていたりと、描き方にユーモアがあるのが素敵です。
「たったひとつの真の失敗とは、そもそも冒険をしようとしない事だ」というシャクルトンのセリフは、説得力があります。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子17歳、女の子14歳、男の子12歳)
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