かあさんのおっぱいをいっしょに飲んで、本当の兄弟のように育てられた少年とクマのキムルン。いっしょに野の花で遊び、虫や魚をおいかけた。キムルンが大きくなった頃、アイヌの人々にとっての最高神であるクマを天に帰す儀式、イオマンテがやってきて......。山の神クマとアイヌの少年をめぐる壮大ないのちの物語。
今年(2018年)、北海道と命名されて150年にあたります。
もともと「蝦夷地」と呼ばれていたそうですが、明治という新しい時代を迎えるに際して新しい名前を付けることになります。
そこで探検家松浦武四郎が「北加伊道」を含むいくつかの案を出し、そこから「北海道」と付けられることになったそうです。
名前のもつ雄大さは北の大地にぴったり合っています。
松浦は現在の三重県に生まれていますが、探検家ということで北海道まで足を伸ばして、実際自分の感覚として、この名前がひらめいたのでしょうか。
北海道には自然だけでなく、アイヌの人々の暮らしと歴史が息づいていました。
先住民であるアイヌの人々からすると、虐げられた歴史もあるでしょうが、共存していくためには先住民への尊敬が必要でしょう。
それはさまざまな場面で芽ぶき、大きな木となって、今に至っているのではないかと思います。
北海道の旭川で生まれ、地元の旭山動物園で働き、そして動物の生態をきちんと描く絵本作家となったあべ弘士さんのこの絵本も、そんな成果のひとつです。
アイヌの伝説は小さなヒグマの子と少年の、友情というよりは、兄弟愛のような世界を描いています。
本当であればイオマンテの夜に神に捧げられるはずであった小熊がひょんなことで森に帰ってしまう。やがて成長した少年はヒグマを神に返すべき、山深く入ってこのクマをさがすことになる。
さだめられて運命のもと、大きく成長した少年は愛するヒグマに矢を放つ。
自然とそこに生きた人々と、そして今の私たち。
あべさんのこの絵本は北海道の大地のように、深い。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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