いま、中国の子どもたちに人気のある旬の絵本をおとどけする、中国絵本館シリーズ。第2作目も作家ヤン・ホンインと画家のエレーヌ・ルヌヴーのコンビが手がけた絵本です。ヤン・ホンインは中国でシリーズ累計1億部の人気作家。ある出版社の「2018年 子どもたちがいちばん好きな作家賞」も受賞しています。エレーヌ・ルヌヴーはフランス生まれの画家で、ヤン・ホンインと組んでたくさんの絵本を出しています。中国絵本館シリーズの第1作目『ともだちになったミーとチュー』では、ふたりのコンビによる、ネコとネズミのたのしいお話をおとどけしましたが、今回の絵本は少し趣がちがいます。 『木の耳』というふしぎなタイトルの作品は、文字どおり耳がはえてきた木のものがたり。「木の耳」とは日本でいう「キクラゲ」のこと。木にはえている形が耳に似ているので、中国では「木耳(ムーアル)」といいます。白いキクラゲは「銀耳(インアル)」ともよばれます。最近、日本で見かける生のキクラゲは「毛木耳(マオムーアル)」、日本名はアラゲキクラゲです。ヒメキクラゲ、タマキクラゲというのもあって、どれも食べられるそうです。 かれた木は耳を手にいれたことで、そとの音がきこえるようになります。木のうろで冬眠していたカエルや、木のそばですごした家族との思い出をたくさんもっているおじいさん牛、木が鳥の天国だったころの思い出を語るツバメのママ……。みんなの思いをきいた木は、もういちど生きたいと強くねがいます。そして……。最初のページの木と最後のページの木をくらべてみたとき、そのちがいに心が動かされます。 いっぽんの枯れ木が再生を果たすものがたりを彩るのは、エレーヌ・ルヌブーによるあざやかで緻密な絵。細部まで丁寧に描かれた絵は、よく見ると、例えば木の幹にいろいろな動物が隠し絵のように描きこまれていたりします。絵をじっくりと見た子どもは、たのしい発見に胸を躍らせることでしょう。また、『ともだちになったミーとチュー』に引き続き、翻訳を手掛けたのは中友美子さんです。中さんは読み物から絵本まで、中国の児童文学作品を多数翻訳されている、いわば中国児童書翻訳の第一人者。本書も、そんな中さんによる選び抜かれた言葉で訳されていて、読むだけでなく耳からきいても心地よい物語となっています。
枯れ木に耳があったら、どんなことが聞こえてくるのでしょう。主人公の木が耳にしたのは、その木がいろんな物たちに、憩いの場と思い出を与えていたという感謝の言葉でした。
その言葉は老木に、再び葉を身につけたいという生命力を与えました。
そういえば、生きるエネルギーを感じさせるような絵が印象的です。
私の好きなキクラゲから連想した木だということにも、親しみを覚えました。
老いた自分に活力をくれるような一冊です。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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