誰もが心の中で憧れを抱いているかもしれない、竜。 想像するのは、あの壮大な姿。 ところが、その竜が生まれてきたのは……雨つぶの中!
小さな小さなちび竜が最初に出会うのは、水たまりで出会ったボウフラ。 一緒にぴんぴんしながら、彼らは言うのです。 「みんなで ちび竜 うまれるのを たのしみに まっていた。」 そして、教えてくれます。ちび竜はここを飛び出して、どんどんでか竜になる、と。
その言葉通り、たんぽぽの綿毛で飛び立つと、とんぼに飛び方を教えてもらい、フナからは「うろこ通信」のやり方を、もぐらからは「土」の色んなことを。うさぎと飛びくらべをし、こうまとかけっこをし、杉の木と背くらべ。さらに、入道雲から…海から…山や森と…。そうやってあらゆる自然界の友だちと遊びながら、仲良くしながら、やがて神通力も身につけて。
みえないほどのチビチビだったちび竜は、今や…… 光る青い地球を抱いている!
あらゆる命のキラキラした輝きを、うたうような言葉にのせてお話を作り出す詩人工藤直子さん。最初は驚くほど愛らしいちび竜の姿を、めくるたびに迫力を加えていき、やがて地球を包み込むほどのスケールの大きさへと変化させていく絵本作家あべ弘士さん。
そのラストのシーンに感動を覚えながら、それでも嬉しいような、くすぐったいような気持ちが残るのは、工藤さんが誰も彼もを私たちの「ともだち」として描いてくれているからでしょうか。竜はきみの心の中にも……いる!
自分だけの本棚にしまっておきたくなる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
小さなつぶからうまれたちび竜は、水たまりからとびたち、いろいろな生き物に出会う。とんぼからは飛び方を、フナからは「うろこ通信」のやり方を教えてもらい、ほかにもたくさんのともだちに出会って、あそび、風や水や土となかよくなった。どんどんでかくなっていったちび竜は、やがて、光る青い地球を抱いて……。うたうような工藤直子の言葉と、繊細かつ迫力あるあべ弘士の絵が、地球にあふれるいのちをゆかいに、壮大に描く。
どんなお話なのか知らずに一年生の娘に読み聞かせをしました。竜が小さなつぶからうまれたという発想にわくわくしながら、心地よい言葉のリズムを楽しんで読み進めました。
シンプルなイラストが次第にダイナミックに壮大に変化していく様子が素敵で、見開きであらわれた大きな竜の姿は、「ひかる あおい 地球を だいている」という言葉と共に胸に響き、とても感動的でした。
ラストには工藤直子さんの力強い言葉のメッセージが続き、どんな子もありのままで前を向いて生きていけるように背中を押してくれているんだな〜と感じました。娘にも伝わっているといいなと思いながら読みました。多くの子どもたちに触れてほしい一冊です。素敵な絵本に出合えました。 (ouchijikanさん 40代・ママ 女の子12歳、女の子7歳)
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