谷川俊太郎さんの詩「ぼくのゆめ」の中に、「いいひとになりたい」というコトバがあります。
谷川さんは、「いいひと」をコトバに書くのはむずかしいので絵で描いてほしいといって、「オサム」という文を書きました。 それを見たあべ弘士さんは、オサムはゴリラだとひらめいて、たちまち絵を描きました。 あべさんに言わせると、ゴリラは、
平和主義者でいばらない。 きれい好き、きれいなものも好き。 他人(他ゴリラ)に愛情をもち、子ぼんのう。 あそびが大好き。 ご先祖を大事にする。 死を認識している…
まるで、谷川さんの祈りそのものです。いいひと絵本は、こうして生まれました。
この絵本のおしまいに、谷川俊太郎さんの「ぼくのゆめ」という詩が載っています。
大きくなったら何になりたいと大人の人が訊けば、「いいひとになりたい」と答えるという、そんなはじまりの詩です。
なかほどに「えらくならなくていい/かねもちにならなくていい/いいひとになるのが ぼくのゆめ」という一節が出てきます。
そうなんだ、この絵本の「オサム」はゴリラの名前ではないんだ。
きっと谷川さんは「いいひと」の代名詞として「オサム」を使ったのだ。
そんなことを思いました。
出版社さんからの案内に谷川さんが「いいひと」を「コトバに書くのはむずかしいので絵で描いてほしい」と話されていたとあります。
絵を描いたあべ弘士さんにとっての「いいひと」は、ゴリラだったのです。
なので、谷川さんの「オサム」という詩に、どんな絵を描いてもいいのです。
まずは、真っ白な画用紙をさしあげましょう。
クレヨンでも色鉛筆でも構いません。
谷川さんの「オサム」に絵を描いてみましょう。
それがきっと読者の考える「いいひと」なんだと思います。
それは、もしかしたら学校のともだちかもしれないし、おとうさんやおかあさんかもしれない。
詩は自由だし、絵は言葉から生まれる翼です。
そんなことを考えた、絵本です。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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