クジラは死んだらどうなるのか?
あの巨体は、海に沈む? いつかは浮かんでくる? 潮や波に流されて、どこかにいくとか? 死体が腐りはじめたら、海が汚れるんじゃ? それに骨は──?
考えてみれば、これほどミステリアスな死があるでしょうか? ただでさえ未知の世界である深海で、クジラになにが起きるのか。あの巨大な体がひっそりと横たわる姿さえ、リアルに思い描くことができません。
クジラの死からはじまる本書は、海底に到達した死骸とその周辺の環境になにが起きるのかを時間経過とともに追い、「クジラは死んだらどうなるのか」という疑問の答えをあきらかにしていきます。 舞台は、アメリカに近い太平洋の東側。そこで一頭のコククジラが死を迎え、32トンもの巨体が、1,500mの深海にゆっくりと沈んでいきます。
「70年生きてきたクジラの命は、これでおわり。 でも、深海でひっそりくらす生きものたちにとっては、あたらしいはじまり。 海の底にしずんだクジラは、これから50年にもわたって、 さまざまな命をささえてくれる、すばらしいおくりものなのだから」
50年! 70年生きた命が、死後50年かけて他の命を支える。なんというスケール感でしょう。
クジラの肉を食べる、ヌタウナギやオンデンザメ。骨に残ったわずかな肉さえ餌にする、ヨコエビ。そして、そんなヨコエビを狙って集まるタコ。さらには、肉のなくなった骨さえみずからの命に変える、驚くべき生き物たち。
登場する生き物は、深海をすみかにしているだけあって、奇妙な生態や見かけのものばかり! 深く、暗い青で塗られたページに、見たこともない生物たちが次から次へと集まってくる光景は、ぞくっとさせられるのに、どこか神秘的。まるで知らない惑星か、太古の地球をのぞいているようです。
深海に沈んだクジラがささえる、「鯨骨生物群集」と呼ばれるこうした生物たちが発見されたのは1987年のことで、まだほんの40年前。しかも、その後発見されたのは世界中の海でたったの25例。鯨骨生物群集については、まだまだわからないことだらけなのです。深海……未知……ああ、ロマンがうずく!
他では読めない、海の生き物の新しい一面を知ることができる一冊! 新発見の、宝庫がここに!?
(堀井拓馬 小説家)
地球上でいちばん大きな動物クジラは、死ぬと真っ暗な海の底に沈み、何十年もかかって朽ち果ててゆく。 そのあいだ、実にさまざまな深海生物が死骸に集まってくる。肉を食べるもの、骨を食べるもの、それらの生き物をねらうもの…。 この特殊な生態系は「鯨骨生物群集」と呼ばれ、沈んだ場所等で集まってくる生物も違い、まだまだわからないことも多い。 終わりをむかえた命が50年間、豊かな生態系を支えるようすを描いたノンフィクション。自然の営みの奥深さが感じられる。 日本語版監修は国立研究開発法人海洋研究開発機構の藤原義弘氏。
タイトルから、ドラマ性を想像していたので、かなり以外感のある絵本かもしれません。
でも、あらためて自然の営みを考えさせられ、納得しました。
クジラは死んだら海底に沈むのです。
そして、その巨体が様々な生き物に命を与えているのです。
日ごろ耳にすることのない、生き物が深海に存在していることにも驚きました。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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