古事記のなかでは「細い腕」と形容されている大根。私たちには、「大根足」のほうがなじんでいるのですが、 昔は栽培技術も乏しかったので、今のような大きなものは出来なかったからだと言われています。このように物のたとえやことわざにも引用されてきたのは、それだけ大根が身近な存在だったという証拠です。 そうして、『徒然草』六十八段に、筑紫の国であった出来事だそうだと、書きとめられた段には、 「つちおおね」と読み下されています。まさに「土の中にできる大きな根」という、そのままの名付けです。 白昼夢か妄想の類として聞き捨てられてしまってもおかしくない奇っ怪な出来事が、都にまで伝わってきたと、 兼好法師が書き留めたのは何故なのか、理由を知りたくなります。どうせうわさ話だと半信半疑で耳にしたけれど、 おかしみもあって、何より人助けの良くできた話だということで、微苦笑しながら筆を走らせたのかもしれません。 このごく短い文章を基に、大きくイメージをふくらませた新しい民話絵本が生まれました。 文体には、作家の出身地である徳島県など、四国地方の言い回しを取り入れています。 また、絵は独特なモチーフの画家が、物語の突き抜けたおもしろさを表現してくれました。
一宿一飯のお礼にと旅のお坊さんのくれたのは大根の種だったのでしょうか。
荒れ地に根付いて、たろさくを助け、貧村の暮らしを潤してくれました。
悪徳長者の企みに、奮闘するツチオーネ侍たちの活躍に、胸のすくような勧善懲悪を見ました。
軽部武宏さんのあくのある絵が、物語を印象的にしています。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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