ぐいぐいと草をかきわけて進むクマ。風のわたる草原で遊ぶ親子のクマ。アラスカを歩き、クマを見つめ、クマに見つめられてきた著者が、子どもたちのために遺した最後の写真絵本。
この本の作者である写真家、星野道夫さんは1996年取材中に熊に襲われて亡くなりました。
それまで星野さんの事は全く知らず、初めて見たのがこの写真絵本だったのですが
星野さんが撮った大自然の中の熊の写真と、詩のような文章が美しく組み合わされていて本当に感動的です。
町の雑踏を歩いている時や電車に揺られている時、その同じ時に遠い遠い山奥を歩いている筈の熊の姿が思い浮かび、会いたくてたまらなくなる気持ち、
会いにいっても近くまで行ける訳でもなく、遠く離れているしかないもどかしい気持ち、
”夜になると すこし こわいんだ
どこかに おまえがいると 思うだけで
テントの中で じっと耳をすましてしまうんだ
でも そんなとき ふしぎな気持ちになるんだよ
おれは 遠い原始人になったような気がして
おれは 動物になったような気がして
夜になると すこし こわいんだ
でも そのふしぎな気持ちが すきなんだ”
星野さんの熊に寄せる愛情、そしてどんなに自然が好きで憧れてもそれと一体になる事はできない人間の悲しみのようなものが切々と伝わってきます。
多くの人に読んでほしい本です
(リアソールさん 40代・ママ )
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