昔、南の国に、一人の王様が住んでいました。この王様が世の中で一番好きなのは、金でした。ある日、王様は森で金色の鹿を見つけます。鹿が踊ると、足下の砂が金に変わるのです。王様は鹿を生け捕りにしようとしますが、うまくいきません。そこで王様は、ホセンという牛追いの少年に3日以内に鹿を連れてくるよう命じます。ホセンが鹿を連れて王様の御殿に到着すると、鹿は踊りに踊ります。すると金の砂がうずたかく積もって、王様を埋めてしまいます。
バングラデシュの昔話ということで、どんなお話なのかとワクワクして読み出すと、非常に物語性に富んでいて、ぐいぐいと話に引き込まれてしまいました。
この絵本の魅力は、その物語性の高さなのです。
そして、とても興味深く神秘的な金色の鹿を巡って、欲深い王様と、それに巻き込まれてしまった心優しく誠実なホセン少年が、とても対照的に描かれています。
ホセン少年が、王様のために金色の鹿を捜し求め、旅をするのですが、その時に、様々な動物たちに出会い、それを助け、また助けられる姿がとても印象的に残りました。
何かをしてもらったら、その恩に報いて、恩返しをする。
その有り様は、我侭な王様の一方的な搾取とは、対照的で、とても美しい姿に映りました。
この絵本のもう一つの魅力は、秋野不矩さんの描く絵です。
ある場面では、迫力があり、ある場面では、とても神秘的であり、またある場面では、うっとりとするくらい美しく描かれていて、この物語には、この絵しか考えられないくらいしっくりとしていて本当に秀逸です。
40年間も愛される絵本は、やはり名作なのですね。 (はなしんさん 30代・ママ 女の子9歳、男の子7歳)
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