そのむかし、王国のない王女がいました。プリティという名の子馬と、子馬のひく荷台、それだけが王女のもちものでした。王女は、毎日荷馬車にゆられて、王国をさがす旅をしています。さて、王国は見つかるでしょうか ――。 繊細で美しい絵が上質なおとぎ話のようですが、ほしいものを手に入れるため積極的に行動するプリンセスは、とっても現代的! 新しいシンデレラ・ストーリーの登場です。
2009年のイギリスの作品。
その表紙の美しさに惹かれて読みました。
物語は、
「そのむかし、王国のない王女がいました。
プリティというなまえの子馬と、子馬のひく荷台、それだけが王女のもちものでした」
という書き出しで始まります。
国がない王女って?という疑問以前に、住所不定って言うことじゃないの?と思ってしまったのですが、そんな野暮なことを考えてしまうと、このストーリーにはついていけません。
王女は、荷物を運ぶことで日銭を稼いでいるのです。
そして、荷を運びながら王国を探し続けているのですが、なかなか見つかりません。
お城のお茶会に招かれれば、出されるのは全て二番目のもの。
王国のない王女の扱いとは、そんなものなのです。
さらに、6人いたお姫様はお古のドレスを王女にあげるのですが、王女は喜んで貰い受け、それを金銭に換えるのです。
その時、道化師から貰った赤いタイツだけは売らずに自分のものにしたのですが、それが後の伏線になっています。
ある日、王女は、お城でのパーティに行くと、各国の王子から求愛されるのですが、食べ物を粗末にする姿に嫌気がさしてしまいます。
お城をこっそり抜け出して、国境で出会ったのがお城にいた道化師。
なんと、王女は、道化師にいきなり求婚するのです。
突拍子もない展開なのですが、最後に二人のいるところが王国なのだという結末が、何とも居えず素晴らしいものだと思いました。
物質的な豊かさでなく、先日来日したプータン王国のような心の豊かさの尊さを諭してくれるような作品です。
最初は、サラ・ギブのまるで影絵のような美しい絵に目を奪われたのですが、どうして、物語の構成も実にしっかりしたもの。
起承転結が明確で、読み続けられる古典となりそうな作品だと思います。
お金を得て幸せになるというありきたりのエンディングでないところが、現代版のシンデレラストーリーと言ったところでしょうか。
物語の奥深さ、絵の美しさとも1級品。
完成度の高い絵本としてオススメします。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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