日曜日の朝、仲良しのこうさぎのぴょんこのうちに遊びにいくことにした、こぐまのくう。 あかるい林の中をたったか走っていると、きれいな赤い花を見つけました。 「ひゃあ。かわいいなあ」 ぴょんこちゃんに持っていってあげようと、思わず花を折ったくうは、 「いやーん」 悲しそうな声にふりむいて、びっくり。 ぴょんこが花を指さしています。 「ひどーい。それ、あたしのよ。あたし、さくのを、ずっとまってたの。それにさ」 それきり黙ったぴょんこの目から涙が流れだし、ふりはらったぴょんこの手は、くうの差し出す花にあたって、赤いはなびらがはらはらとみんな落ちてしまいました。
くうのしょんぼりした気持ち。 通りかかったきつねの子たちにひやかされて、頭はごちゃごちゃ、胸はつめたくて、さむい感じ。 すれちがった気持ちをどうしていいかわからない、むしゃくしゃとさみしさが、丁寧に描かれています。
でもね、2人の気持ちは、すれちがったままだったでしょうか? いえいえ。「くうちゃん」「ぴょんこちゃん」とお互い名前を呼び合うだけで、顔を見ただけで、わかってしまう「ごめんね」と「ありがとう」。 最後は、くうをひやかした子ぎつねたちも加わって、みんなで遊ぶいい日曜日だったそうですよ。
あまんきみこさんのやさしい語りと、黒井健さんが描くかわいい動物たち、あかるい林の風景に、ほんわか癒される「なかなおり」の絵本。 くうとぴょんこの気持ちをそっと後押ししたのは・・・本を読んでのお楽しみ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
こぐまのくうが、あかい花をみつけたよ。なかよしのぴょんこちゃんにあげようと花を摘んだとき、うしろから「いや〜ん」と声が! ぴょんこちゃんが泣いていた。ぴょんくちゃんも、同じ花を、くうに見せたいと思っていたのでした。走りさるぴょんこちゃん、ぼうぜんと見送るくう。赤い花びらが花の精となって、二人の中を取り持ちます。
子どもたちによくある「思いのすれ違い」を、あまんきみこが温かいまなざしで綴った作品。 その思いを大事に、さらにイメージをふくらませるのが、黒井健の絵。 じっくりと読み応え、見応えのある絵本。
こうさぎのぴょんこちゃんに、きれいな赤い花を摘んであげたこぐまのくう。でもその花は、ぴょんこちゃんが咲くのをずっと待っていた花だったのです。花びら5枚のうち、2枚はくうのもとへ、3枚はぴょんこちゃんのもとへと飛んでいったのは花を摘んだ訳をそれぞれに伝えるためでした。仲直りする勇気をもらえる絵本です。 (ぼんぬさん 40代・ママ 女の子4歳)
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