谷口智則さん最新刊 全然違う「きみ」と「ぼく」の物語
40周年をむかえた「14ひきのシリーズ」。
刊行された順にシリーズ作品をご紹介している連載企画、第6回です。
今回は1988年に刊行された『14ひきのおつきみ』です。
みどころ
色づいた葉と、どんぐりの実の揺れる太い樫の木を登り、ねずみながらの小技を使ってお月見台作りに奮闘する子供たちの姿が、実に生き生きとしています。その光景を木の上から描写した構成は立体的で、まるで迷路を見ているかのよう。「自分たちも上ってみたい」と、うらやむ小さな読者も、きっといることでしょう。
夕日が沈み、満月が昇る場面は壮観です。ススキを飾り、月見だんごをお供えするお月見の風習を知ることができますね。
自然の気高さと、自然と共存する美しさが描かれた、日本の秋がいっぱいの作品です。
――(ブラウンあすか)
おつきみの日、14ひきは手づくりのお月見台を木の上につくっています。
おだんごをおそなえしました。くりのみやどんぐりも。
まっかな夕日がしずんで、夜がやってきました。
山のむこうから、「でた、でた。」まんまるのおつきさん。
自然の恵み、やさしいひかりにありがとう。14ひきのしずかな夜です。
本作の制作にあたって、いわむらさんは「夕方の観察をした」といいます。
それは、外に出て、夕方の時間を体で感じるということ。日が暮れていく様子が描かれていますが、それは「太陽を描かずに太陽を描くこと」でした。絵本の中にもある「夜が広がっていく」ということをいわむらさん自身が強く感じたそうです。
この書籍を作った人
1939年東京生まれ。東京芸術大学工芸科卒。主な作品に『14ひきのあさごはん』(絵本にっぽん賞)など「14ひきのシリーズ」、エリック・カールとの合作絵本『どこへいくの?To See My Friend!』(童心社/アメリカ、ペアレンツチョイス賞)、『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』(偕成社/サンケイ児童出版文化賞)、『かんがえるカエルくん』(福音館書店/講談社出版文化賞絵本賞)、「トガリ山のぼうけん」シリーズ、「ゆうひの丘のなかま」シリーズ(理論社)などがある。98年栃木県馬頭町(現・那珂川町)に「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館、絵本・自然・こどもをテーマに活動を続けている。栃木県益子町在住。