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小さなチュウリップがみせる、春の午後のファンタジー。魅惑的な幻想と東北の早春の風景が美しく溶けあった、賢治のかくれた名作。
ああ、感想、うまくかけるか、とてもとても自信がありません。
私の文章は、この宮沢賢治の世界のひろがりを伝えるには、あまりにもつたなすぎるのです。
でも、やっぱり書いてしまいましょう!
個人的な意見なので、眉をひそめられる方もいらっしゃるかもしれませんが、
宮沢賢治のお作は、文芸作品、というよりは、工芸作品のように感じるのです。
背中を丸くして、賢治が作品と対峙しているのが、目に浮かぶよう。
宮沢賢治独特の、言葉の放つ光というものが、私をとらえて離さないのです。
特に、私がひかれたのが、この「チュウリップの幻術」です。
短編ですが、宮沢賢治らしさが、随所に見られる作品です。
それが、絵本として登場しているのを発見しました。
ーごらんなさい。
あの花の盃の中からぎらぎら光ってすきとおる蒸気が
丁度水へ砂糖を溶かしたときのように
ユラユラユラユラ空へ昇って行くでしょうー
チュウリップが、お酒を作り出す。
この文章、なんとも美しい表現です。
ああ、読んでいると私も、光の酒に酩酊してしまうようです。
田原田鶴子さんのこの絵も、職人技!といいたくなります。
絵の雰囲気だけで、「あ、これ東北の風景だな」と分かる絵ですね。
正直、その特性上、宮沢賢治さんの文章を、絵本や、他の映像作品にしあげるのは、たいそう苦労がいるのでは、と思うのですが、
この作品は大変すばらしい仕上がりだと思います。
きっと、賢治にひかれているファンの方々も、納得される出来栄えではないか、と思います。 (ルートビアさん 30代・ママ 男の子4歳)
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