ひとひらの雪がキツネの鼻の上に落ちてきました。
主人公のキツネはまだ親から離れたばかりの若いキツネ。 表情はあどけなく、はじめて迎えた冬に興味津々。 「ぼく なにかしなくていいのかな?」って、毛虫や、森の動物たちに聞いていきます。
おはなしの中で森の生き物の冬越しの様子がわかるのもこの絵本の魅力の一つ。 キツネは森の仲間たちと違って眠くないし、なんだか森の中のいたい気持ちなのです。 どうしてなのでしょう。それは、とてもとても素敵な出会いが待っているから。
原題は「WINTER DANCE」 作者のマリオン・デーン・バウアーさんは、雪を楽しむ機会の多いミネアポリス在住とのこと。 雪景色の中で踊るキツネたちを見てこの作品の着想を得たそうです。 おはなしも素敵ですが、何と言っても絵が魅力的です。 リチャード・ジョーンズさんの絵は静かで温かみを感じさせてくれます。 冬を表現する色がこんなにも温かく感じるなんて。
表紙のキツネの表情のとても可愛らしいこと。読み聞かせの時は表紙をたっぷり見せます。 はじめはあどけなかったキツネが、メスのキツネと出会ってからはりりしい若キツネの表情に。 なんだか胸がキュンとします。
冬の読み聞かせの定番になりそうです。 小さいお子さんと親子で、小学校低学年へクラスの読みきかせにもいいですね。
(山田裕子 小学校司書)
雪が降ってきました!冬にそなえてすることはたくさんあります。木の実をかくしたり、あたた かい南へ飛んでいったり、春になるまで寝てすごす動物もいます。けれど、どれもキツネのすることではなさそうです。冬のあいだ、キツネはいったい何をするのでしょう? はじめての冬を迎えた若ギツネは、すてきな相手と出会い、雪と一緒にひらひら、くるくる踊って、恋をします。一匹の足跡ではじまった絵本は、二匹の並んだ足跡で終わります。ほかにも絵のなかには画家のさりげない遊び心がたくさん発揮されています。
なんて透明感のある綺麗な絵でしょう!
可愛い若キツネの表情に引き込まれてページをめくると、そこには本当に綺麗な冬景色が広がっています。こんな絵を見ると、ただ寒くて嫌だなーと思う冬の一日も、キラキラと輝いてくる気がします。
いろんな動物や鳥に出会い、冬越の仕方を尋ねる、あどけなくて可愛い若キツネ。そして、自分との違いを感じて、自分をみつめて考え、知らずしらずのうちに成長していく若キツネ。最後、素敵な彼女と出会って一緒に踊る若キツネの姿は、喜びと自信に溢れているように思えます。ロマンティックで微笑ましい素敵な一冊です。
寒い冬の一日も、とびきり素敵なこんな絵本をじっくり味わえば、心ぽかぽか温かくなりますね! (あさみーこさん 50代・その他の方 )
|