見渡す限り自分の家と畑以外何も見当たらない辺境の地。そこへ佇む老人。こんな環境は日本にはなかなかなく、家族もないこの孤独なジョンじいさんの気持ちというのは想像ができない・・・なんて途方に暮れてしまいます。 ところが、自分でつくった素っ気無いかかしに顔をつけてみるジョンじいさん。心なしか表情の変わっていく様子を見ているうちに、気がつくとジョンじいさんの心の変化にぐいぐい惹きつけられていく自分がいます。 かかしとおじいさん、若者とおじいさん。この広い広い舞台での小さな繊細なやりとりが一つ一つ凝り固まっていた老人の心をほぐしていき、同時に読む者の心にも深く響いてきます。 孤独や悲しみを知るもの同士、多くの会話は必要ないのかもしれません。かかしと仲良くなっていくじいさんを見て、誰かを思いやるという事が自分の心を豊かにするという事に改めて気がつかされ、若者とのやりとりでは心を開いていくことによって友情が生まれるのだと納得。 個人的には希望に満ちた、とても優しい本だと感じました。ただ、年齢や状況によって受け取り方はそれぞれ変わるのかもしれません。それも画家と作家の世界観が見事に一致した芸術的な絵本の懐深さ故なのかもしれませんね。丁寧に何度も何度も読み返してみて欲しい絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ひとりぼっちのジョンじいさんが 畑にたてた かかし。 顔を描き、服を着せ、 毎日 話しかけているうちに、 かかしは、ジョンじいさんの 大切な友達になります。 そこへ、一人の若者が現れて・・・・・・。
孤独な農夫が畑にかかしをたてました。
かかしはじいさんの話し相手になり、やがては大切な友人になります。
そこへ、一人の若者があらわれて……。
孤独を好んでいる風にみえたじいさん。
その隠された寂しさや、心の暖かさが、
かかしや若者とのやりとりで見えてきます。
挿絵のおじいさんの表情の変化!みてください。
読んだ後、映画を見たような気分です。
ピーターシスの絵も手伝って、頭の中に広い畑の風景が広がって。
おじいさんのいきいきとしたハーモニカの音色まで聞こえてくるみたい。
心に届くのは、小学生なら高学年くらいからでしょうか。
中学生や高校生にもぜひ手に取ってもらいたいです。
静かに心にしみる味わい深い絵本です。 (ママは魔法使いさん 40代・ママ 男の子15歳、女の子9歳、女の子7歳)
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