もし、一日の食べものがだいず15つぶだけになってしまったら……。
この絵本は、トットちゃんの戦争体験を、トットちゃんの目線で語ったおはなしです。戦争がはじまるとどんどん食べるものがなくなり、トットちゃんは、たった15つぶのだいずで一日を過ごすことになります。 この絵本で描かれる、これまでの戦争絵本と違う大きな特徴を2つ挙げてご紹介します。
1つめは、「一日の食べものがだいず15つぶ」という子どもたちが感覚として掴みやすい表現がなされていること。学校へつくまでに3つぶ食べてしまって残り12つぶになったこと、防空壕の中で不安な気持ちから残りのだいずを全部食べちゃおうか、がまんしようかと気持ちをいったりきたりさせるトットちゃんの姿。子どもたちは、だいずが残り何つぶかということを真剣に数えながら、トットちゃんの気持ちに心を添わせて読んでいくことでしょう。
2つめは、トットちゃんの笑顔です。 これまで、戦争の絵本で描かれる子どもたちに笑顔の場面はほとんどありませんでした。もちろん戦時下のつらい状況の中ですから、暗い顔をしていたり泣いていたりするのが当たり前といえば当たり前なのですが、でもきっとその中でも子どもたちの中にはわずかな喜びがあったり、ホッとする瞬間があったり、笑顔になることもあったと思うのです。お話の中で、トットちゃんは読者である私たちにたくさんの表情を見せてくれます。それは子どもそのものを全身で表現しているようなエネルギー溢れるトットちゃんだからこそ実現したことかもしれません。感情豊かなトットちゃんの戦争体験だからこそ、よりリアルに迫ってくるものがあります。平和で安心だった毎日の生活に戦争が入り込んできて、さまざま感情を動かしながら戦争を生き抜いていくトットちゃんを、子どもたちは、友だちのように感じて読みながら、お話に没頭していくことでしょう。
そんなトットちゃんの明るさやひたむきさによって、戦争を描いたお話ながらもあたたかさが感じられる『トットちゃんの 15つぶの だいず』。そのあたたかさの源は、平和や子どもにとっての幸せであり、だからこそ、その幸せを守らなければいけない、戦争になるとそれが失われてしまうという強いメッセージが伝わってくるのです。
女優の黒柳徹子さんが自身の小学生時代を描き、大ベストセラーとなった『窓ぎわのトットちゃん』。そのもうひとつのおはなしとして『トットちゃんの 15つぶの だいず』が誕生しました。児童文学作家の柏葉幸子さんが子どもたちに語りかけるような親しみやすい文章を、絵本作家の松本春野さんが、やわらかなタッチで生き生きとしたトットちゃんを描かれました。トットちゃんを描くにあたり、いわさきちひろさんの孫でもある松本春野さんは、大きなプレッシャーがあったことをインタビューでお話くださいましたが、トットちゃんへの深い理解と愛情から、新たなトットちゃんがここに誕生しました。インタビューでは、子どもたちに向けて「たくさんの自分といっしょだ、を見つけてほしい」とのメッセージも寄せてくださっています。
トットちゃんの戦争体験を自分のことのように感じながら想像し、平和を考える大きな一歩に……。 親子で一緒に、たくさん会話しながら読んでみてください。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
<とうとう、トットちゃんの一日の食べものは、だいずが15つぶだけになってしまいました。>
『窓ぎわのトットちゃん』では描かれなかった、トットちゃんのもうひとつのお話を絵本にしました。
女優の黒柳徹子さんが自分自身の小学生時代をえがいた『窓ぎわのトットちゃん』。世界で2500万部以上のベストセラーとなり、「トットちゃん」と「トモエ学園」は世界中の人から愛されています。
トットちゃんの小学校時代は、日本が戦争をはじめた時代でもありました。
だいすきなパパ。トモエ学園の楽しいお弁当の時間。あまい、あまいキャラメル。<家族そろって、安心で、うれしかった毎日>から、いろいろなものがなくなっていきます。
そして、ある日、とうとう一日の食べものが、炒った大豆15つぶだけになってしまいました。トットちゃんは、15つぶをいつ食べるか、悩みに悩んで……。
長年ユニセフ親善大使として活動されている黒柳徹子さんの原点ともなる、トットちゃんの等身大の戦争体験です。
語りかけるような文章を書いてくれたのは、数々の賞に輝く児童文学作家の柏葉幸子さん。ジブリの「千と千尋の神隠し」に大きな影響をあたえた作品『霧のむこうのふしぎな町』など、魅力的なファンタジーを次々に生み出しています。
絵を手がけたのは、やさしい画風が人気の絵本作家・松本春野さん。「トットちゃん」といえば、いわさきちひろの絵を思い出しますが、松本さんは、いわさきちひろのお孫さんにあたります。大のちひろファンでもある黒柳徹子さんが、「かわいい!」と喜んでくれた令和のトットちゃんになりました。
戦争を描いてはいますが、小さいお子さんにも安心して読んであげられるように配慮してあります。いつも前向きで一生懸命なトットちゃんとはじめて出会うのにもぴったりな1冊です。
*読んであげるなら5歳くらいから *ひとりで読むなら小学校低学年から *すべての漢字にふりがなつき
今も活躍している黒柳徹子さんと、戦争体験が結びつかなかったのですが、改めてトットちゃんのエピソードとして感銘を受けました。
乏しかった食べ物をポイントに描かれた物語は、軽妙ではあるけれど、生きるということに直結していて、想像することができないほど過酷な状況を想像しました。
1日の食べ物として渡された物が、大豆15粒だけだったら、人はどんな思いになるのでしょう。
夕ごはんの分も入っているから、それを考えて食べなさいと言われたのです。
お母さんは、トットちゃんにいろいろと考えさせたかったに違いありません。
空腹を我慢しながら、トットちゃんは様々なことを考えます。
そして考えて考えて、家に帰るときに7粒の大豆を残すことができました。
そして、何よりも家族が無事だったことに幸せを感じるのです。
共感するにはあまりにも隔絶感のあるエピソードです。
でも、黒柳徹子さんらしい戦争体験であり、食欲という生きるための必須要素を通して、実感できるお話でした。
絵も文章も明るいので、不思議な戦争体験ではありました。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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