12月、街にクリスマスマーケットがたちました。朝、焼き栗売りのおばさんが店を開けていると、ツリーのほうからなきごえがします。そこにいたのは子犬でした。クロと名づけられた子犬は、マーケットでみんなの人気者になります。ある日、ぬいぐるみの犬「スノゥ」を連れたなーちゃんがやってきました。クロは、スノゥが気になってしかたがないようで……。クリスマスにぴったりの、心あたたまるお話です。
第55回講談社絵本賞(2024年)を受賞したのが、
降矢ななさんの『クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし』です。
タイトルにあるとおり、これはクリスマスに読むのが一番いいですし、
刊行もそれにあわせた2023年10月ですが、
賞の発表が4月でしたからそこはがまんしましょう。
今回の受賞で初めて知ったのですが、
作者の降矢ななさんは中欧スロバキアで30年以上暮らしているそうで、
その地の風景や風習なりを絵本にして
日本の子どもたちに伝えたいという思いがあったそうです。
この絵本も、クリスマス前の街の広場で開催されるクリスマスマーケットで
軒を並べるお店とかそこで働く人たちや買い物に訪れる人たちを
とてもやさしいタッチの絵で表現しています。
物語はそんなマーケットに捨てられてい黒い子犬と
白い犬のぬいぐるみを持った女の子の心のふれあいを描いています。
この絵本が刊行された10月にはイスラエルによるガザ地区への攻撃があり、
降矢さんはとても心を痛めたそうです。
6月3日の朝日新聞にその時の思いをこう述べています。
「日常の幸せな気持ちを、今感じられるなら感じて、
それを失わないように私たちは生きていかなくちゃいけない。
日常を大事にして絵本をつくっていきたい」
スロバキアであれ日本であれ、
あるいは今も戦火のつづく世界の国にも
ごくあたりまえのように幸せな日常があればいい。
この絵本の裏表紙、女の子と子犬クロのあたたかなふれあいに心なごむ一冊。
クリスマスにもう一度、読んでみたい。
(夏の雨さん 60代・パパ )
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