もう何年もそこに生えている一本のちいさな木。ある時一ぴきの犬が走ってきて、こんなことを言います。
「ぼく、ゴッチ。つなを くいちぎってね、家出したんだよ。 これから じぶんの すきなところに いくんだ」
自分の好きなところ? ちいさな木は自分も行ってみたくなります。でも動けないから無理だとあきらめかけていると、ゴッチはやってみなくちゃわからないと言います。ためしに根っこをよっこらしょって引き抜いてみると……歩けた! ちいさな木はキッコと名乗り、ゴッチと一緒に「じぶんがすきなところ」を求めて、冒険の旅に出発することに。
ゴッチは、スタンスタン。キッコはイッポイッポ。ゆるやかな丘を登ったり下りたりして歩いていくと、途中で岩のイワオ、沼のイッテキにも出会い、「じぶんのすきなところ」に魅入られた異色の4人が一歩ずつ進んでいきます。スタンスタン、イッポイッポ、ゴロンチョゴロンチョ、ポチョンチョポチョンチョ。その先に見えてきた景色は……?
ああ、なんて素敵な冒険なのでしょう。無理だと思っていたけれど、やってみたら出来るかもしれない。自分の居場所を自分の足で見つけられるのかもしれない。もちろん、その場所が4人とも一緒だとは限らないのですけどね。
文章を手掛けているのは、童話や絵本など、数々の名作を世に送り出してきた角野栄子さん。小さな木の不思議な物語を、軽快に、そして優しくシンプルな言葉で綴ります。絵を描かれているのは、「魔女の宅急便」シリーズ(福音館書店)で角野さんとタッグを組まれている佐竹美保さん。モノクロが基調となった絵は、象徴的でもあり、ユーモラスでもあり。後半に広がっていく緑色の風景は何年経っても心に残るであろう美しさ。
年齢に関係なく、読み終われば、なんだか背中を押してもらったような気分。今ならなんでもできる気がしてきます。「やってみないとわからないでしょ!」 角野さんと佐竹さん、お二人の声が聞こえてくるようですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
町はずれの寂しい道に、ポツンと1本の木が生えていました。もう何年もそこにいましたが、ずっと小さいままでした。あるとき、1匹のみすぼらしい犬がやってきました。「ぼく、家出したんだよ。これから、じぶんのすきなところへ行くんだ。きみも、いっしょに行こうよ」。そういわれた木は、初めて根っこを「よっこらしょ」と土から引き抜いてみました。すると、なんと歩けるようになったのです! さあ、ここではないどこか、「じぶんがすきなところ」をもとめて、冒険の旅に出発です!
とちゅうで岩と沼も加わり、歩みもバラバラな異色の4人が、山あり谷ありの道を一歩ずつ進んでいきます。スタンスタン、イッポイッポ、ゴロンチョゴロンチョ、ポチョンチョポチョンチョ。
はたして、みんなの「じぶんのすきなところ」は見つかるでしょうか?
自分の今いる場所から抜け出して、旅をする犬と木と岩と池。
犬以外は、常識的に考えれば、決して動けないものたちです。
それだけに、動き出したときには驚きました。
この絵本を読んでいると、木や岩ができたのだから私にもできるかもしれない、という気持ちになります。
犬の、
「やってみなくちゃ わかんないよ」
というセリフがとても好きです。
そうですね。
やってみなくちゃ分かりませんね。
まずは行動する、ですね!
(めむたんさん 40代・ママ 男の子21歳)
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