幼い日、学校に行けず文字を読めず書けず,苦労したおばあちゃんの明るくたくましい日常。魂をのせて文字を書く日記が、文字を獲得する喜びにあふれた絵本になりました。 文字を知らずに生活することは、過酷です。 この絵本は、文字を獲得していく人の日常をユーモラスに描き、 文字が読めるようになる、書けるようになる、喜びが表現されています。
60歳を過ぎて文字を習い始めた一子さん。
自分の本当の誕生日もしらない一子さん。
不幸な生い立ちだと思いますが、一子さんが字を覚えていく楽しさがのびのびと描かれています。
それを長野ヒデ子さんの絵がユーモアを加えてくれています。
文化センターで文字を習い始めた一子さんの、6月から始まって翌年の3月までの日記。
気がついたら一子さんの日記に漢字が出てきています。
右ページには日記とそれに添えられた風景。左ページにはまだ自分で文字にできない一子さんの生活。
字を知らない不便さや悔しさ。
自分たちには当たり前にできていることが、当たり前でない人たちにとってどれほど大切かをこの絵本を伝えてくれます。
絵本の最後に書かれていることは、さらにとても大事です。
この絵本の日記。
実は書きたいことを孫の司君に話して、その話を文章にしてもらった上で、間違いのないように書き写していたのだと知らされるからです。
そして、その後に一子さんが自分自身で書いた日記の写し。
とても癖のあるひらがなで書かれているだけでなく、間違いがあったり、句読点がなかったり…。
読み聞かせをするには、自分も何度もつかえてしまい、さらに判読してから読み直したり苦労しました。
しかしその中に一子さんの強烈な感情、悔しさと伝えたい願望が溢れています。
この絵本を手にした人は、ここのところまで伝えてあげて欲しいと思います。
息子はたどたどしくなった私の語りに、吉田さんへの関心を深めたようでした。
この絵本には、日記とストーリーの他に絵の中に登場する人たちのいろいろなセリフがあります。
私は飛ばしてしまいましたが、読み終わってから、息子はその一つ一つを読んでいました。
とても貴重な絵本だと確信します。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子12歳)
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