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日・中・韓平和絵本 非武装地帯に春がくると

日・中・韓平和絵本 非武装地帯に春がくると

  • 絵本
作・絵: イ オクベ
訳: おおたけ きよみ
出版社: 童心社 童心社の特集ページがあります!

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作品情報

発行日: 2011年04月01日
ISBN: 9784494019663

出版社のおすすめ年齢:低学年〜
B5変型判 25.3×25.8cm 34頁

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みどころ

思いがけず生き物の楽園となった「非武装地帯」を描いた美しい本です。
舞台は朝鮮半島。1953年の朝鮮戦争休戦協定により、南北二つの鉄条網で囲まれた「非武装地帯」。
かつては人も暮らしていたのに、今は誰も住めず、出入りが制限された荒れ地です。
地雷が埋まり、今も軍隊がにらみ合う場所ですが、人間とちがい自由に空を渡る鳥は、ここで安心して翼を休めます。植物は青々と茂り、花は咲き乱れ、動物たちが闊歩します。

非武装地帯に春がくると・・・
草花は芽吹き、海にはゴマフアザラシが泳いできて、軍人たちは鉄条網を直します。
非武装地帯に夏がくると・・・
イムジン河には鳥たちが飛んできて、カワウソやキバノロ(シカの仲間)が遊び、軍人たちはつらい訓練を受けます。
おじいさんは春も夏も秋も展望台にのぼって、鉄条網の向こう側を眺めます。

「非武装地帯」以外に難しい言葉はほとんどありません。
『ソリちゃんのチュソク』で韓国のお盆の里帰りを細やかな情感で描いたイ・オクベさん。
『非武装地帯に春がくると』で初めて見るイ・オクベさんが描く生き物は、表情が生き生きとして屈託なく、いつまでも眺めていたい幸せな明るさが感じられます。同時に、生き物のそばには必ず鉄条網があります。
人と人、国と国とが対立する現実を伝えつつ、いつか離ればなれになったなつかしい友と、鉄条網を開け放ち、肩を抱き合いたいという願いを描いたこの本。終盤の観音開きのページは圧巻です。ここがおじいさんのふるさと・・・。

子どもたちにぜひ見せてあげたい。思春期の入り口に立とうとする小学生高学年・中学生にこそ、身の回りの世界だけでなく、すぐ近くの国にこんな現実があることを。今なお衝突の危険がある「軍事」の一面を。心からそう思える作品です。
最終ページの半島地図(本書で描かれた生き物たちが、実際「非武装地帯」のどのへんにいるのか、記されています)も見てみてくださいね。
日・中・韓平和絵本シリーズの1作です。

(大和田佳世  絵本ナビライター)

日・中・韓平和絵本 非武装地帯に春がくると

出版社からの紹介

鉄条網でさえぎられ、人が立ち入れない朝鮮半島の非武装地帯は、生き物たちの最後の避難場所でもある。その四季の移ろいを見つめ続けるおじいさんの、分断された祖国の統一と、平和へのあつい思い力強く描いた絵本。

ベストレビュー

非武装地帯の中では 

朝鮮半島の中央で北と南を分断する非武装地帯。
私の若い頃「イムジン河」という歌がありましたが、祖国を無断された人々の思いと、人の思いとは違って、ゆったりとした自然があること、渡り鳥たちが行きかう様が印象に残っています。
この絵本は、非武装地帯の自然と、それを見つめる老人の思いを描いています。
非武装地帯では、動物、魚たちは、邪魔されることなく南北を行き交い、平和に過ごしています。
そして、非武装地帯を囲む鉄条網のそばでは、有刺鉄線を張り替えたり、軍事訓練をしたり、非武装地帯の向こう側を常に意識した人間がいます。
老人は非武装地帯を眺めながら、本当はその中に入りたいのです。
向こう側にいる自分の近親者たちと、抱き合いたいのです。
一つの国が分断される悲劇を感じます。

非武装地帯の自然の中には、昔の朝鮮動乱期の戦いの残骸が何気なく埋もれています。
そして、皮肉にも、動物たちにとっては「楽園」になっているのです。
絶滅寸前の動物たちが生きのびるのは、人の入らない場所。
第三者として眺めるのと違って、韓国の人の思いは複雑でしょう。

動物たちも守られながら、この地帯がせめて交流の場になれば良いと思います。
(ヒラP21さん 50代・パパ )

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