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違いを認め合うことの 大切さをユーモラスに 伝える絵本
宇宙のかなたの小さな星、凸凹星には、凸凸人と凹凹人が住んでいました。 両者はよく似ていましたが、手の形だけが違っていました。そのために、暮らし方が何から何まで 異なるので、お互いに悪口を言い合い、別々の国に暮らしていたのです。ところがある日、事件が 起こりました。二つの国の間にある高い塔から、凸凸人の坊やが足を滑らせたのです。そこに手を 伸ばしたのは凹凹人。すると、手と手がぱちりとはまりました。けれど、こんどは坊やを助けた 凹凹人が足を滑らせて…。ユーモラスなお話の中に、補い合うことや他者を認めることの大切さが 伝わってきます。

「凸凹ぼしものがたり」は,平成6年,月刊のお話チャイルドとして出版されその後,絶版になっていた絵本です。5歳の息子が保育園から持ち帰りました。
この本を一言で紹介するなら、「私が出会った中で最高の絵本」です。
今まで、お話会や教員としての活動を通して、たくさんの絵本に出会いました。その中にも素晴らしいお話はいくつもあり、受け持った子供たちにいつでも読み聞かせられるよう、自分の蔵書として教室に置いている本が何冊かあります。けれども、その中でも、「凸凹ぼしものがたり」は特別です。
まず、「手の形だけが違う」というシンプルさ。そして、表紙から結末までを貫く「つながる」というテーマ。それに加えて、ちょっとした仕掛けもあり、可愛くて優しい絵のタッチが、読む者の心を楽しく温かくします。
人との違いを受け入れ、工夫することで仲良くなれる。幸せになれる。小さい子供にも人権感覚が、ごく自然にすうっと入っていく物語です。
私が大好きだということもあると思いますが、子どもたちも大好きなお話で、「また読んで!」「あれ、読んで!」と、何度もせがまれます。
ある日、ボランティアのメンバーとのやり取りの中で、「これって、『相手の欠点だと思っていたところが、実は自分にとっては必要な、とても大切なところだった。』っていうことだよね。」と、言った人がいました。
「あっ。」と思いました。確かにそうです。そこって、ものすごく大事なポイントです。言われるまで気付きませんでした。目から鱗が落ちる思いでした。私自身も周りの人をそういう目で見つめ直したいと思いました。
5年生の女の子の感想には,高い塔は「エルサレム」ではないかと思わせる表現がありました。あんびる先生にいただいたお手紙に,9.11のことが書かれており,その子の鋭さに感心しました。
他の人が読むと、また、違った奥の深い見方があるかもしれません。
「凸凹ぼしものがたり」は、「これからもずっとずっと読み続けていきたい。」「一人でも多くの子どもたちに、この物語を届けたい。」私の宝物の一冊です。 (kimiegangiさん 50代・その他の方 )
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